Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
消化管2

(S557)

倦怠感を主訴としたS状結腸憩室穿孔の一例

A patient of sigmoid colon perforation complained of general fatigue

中藤 流以1, 畠 二郎2, 河合 良介2, 飯田 あい2, 高田 珠子3, 谷口 真由美4, 竹之内 陽子4, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 春間 賢1

Rui NAKATO1, Jiro HATA2, Ryousuke KAWAI2, Ai IIDA2, Tamako TAKATA3, Mayumi TANIGUCHI4, Yoko TAKENOUCHI4, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Ken HARUMA1

1川崎医科大学消化管内科学, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3三菱三原病院内科, 4川崎医科大学附属病院中央検査部

1Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, 2Division of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical Pathology and Laboratory, Kawasaki Medical School, 3Department of Internal Medicine, Mitsubishi Mihara Hospital, 4Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School

キーワード :

症例は60歳台男性.H24年07月から当院皮膚科で悪性黒色腫に対して外科的治療と化学療法中.術後経過は良好で化学療法も特に問題なく経過していた.H25年11月中旬から食欲不振と倦怠感を自覚した.自宅で様子をみていたが徐々に倦怠感が増悪しH25年11月18日に突然立ち上がる事が出来なくなったため当院救急搬送された.
身体診察上は腹部平坦・軟.下腹部に軽度の圧痛を認めたが自発痛や反跳痛は認められなかった.血液検査ではWBC増加は認めなかったがCRP 28 mg/dlと上昇していた.胸腹部骨盤CTで後腹膜のfree airを認め,その分布から下行結腸またはS状結腸の穿孔が疑われた.その後腹部超音波検査施行し,S状結腸に多発する憩室と腹壁内free airを認め,憩室とfree airとの連続性がS状結腸下行結腸囲口部付近に認められたためS状結腸憩室穿孔と診断した.
緊急手術となり,腹部超音波検査で指摘した部位に憩室穿孔を認め,S状結腸切除+人工肛門造設術が施行された.切除標本の病理組織検査の結果も術前診断と矛盾しない所見であった.術後に縫合不全とMRSA肺炎を発症したため全身管理を行い,徐々に全身状態は改善傾向である.
消化管憩室は無症状で経過する事が多いが,憩室炎や出血,消化管穿孔の原因となり,その場合は腹痛などの症状が出現する事が多い.しかし後腹膜側や腸間膜付着側へ穿孔した場合は腹膜刺激徴候に乏しく診断に難渋することが多いとされる.後腹膜穿孔の診断には腹部CTが有用とされており,本症例でも腹部CTにより後腹膜free airを指摘可能であったが,穿孔部位の特定は困難であった.本症例では腹部超音波検査により穿孔部位の指摘でき,超音波検査の優れた空間分解能は消化管穿孔の精査にも応用できる可能性がある.