Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓2

(S557)

腹部超音波検査が診断に貢献したRFA後遅発性肝膿瘍の一例

A case of diagnosed deleyed hepatic abscess of post percutaneous Radio-freqency ablation by ultrasonography

渡邉 友絵

Tomoe WATANABE

東海大学医学部付属病院消化器内科

Gastroenterological, Tokai University School of Medicine

キーワード :

【症例】
66歳 男性
【主訴】
食思不振 意識障害
【現病歴】
当院受診の2年前より胃癌,直腸癌で手術歴があり,1年前肝転移巣に対してラジオ波焼灼術施行.2週間前より食欲不振,活気低下を認め,除々に応答が鈍くなってきた事に家族が気付き当院受診となった.
【既往歴】
64歳:胃癌,直腸癌 腹腔鏡下高位前方切除術,開腹幽門側胃切除術,R-Y再建術,術後化学療法 65歳:肝転移(腫瘍生検で転移巣不明) ラジオ波焼灼術 ※同時にアルコール性肝硬変を指摘されているが治療は自己中断.
【個人歴】
飲酒:焼酎500mL/日 喫煙10本/日×46年 薬:なし アレルギー:なし
【家族歴】
特記事項なし
【入院時現症】
身長158cm 体重45kg 体温37.3℃ 血圧140/82mmHg 脈拍110回/分,整 呼吸<20回/分 頭部:眼瞼結膜蒼白,眼球結膜黄染あり 腹部:平坦,軟 圧痛なし Murphy徴候陰性 四肢:前脛骨面にslow pitting edemaあり CNS:粗大麻痺,羽ばたき振戦なし
【入院時検査所見】
WBC 4900/μL.Hb9.9g/L.MCV102.5f/L.AST 128U/L.ALT 36U/L.T.Bil 1.9mg/dL.腫瘍マーカーCEA 3.5ng/mL CA19-9 195.8U/mL.
【入院後経過】
主訴の原因と成り得る原因としてアルコール性ケトアシドーシス,急性化膿性閉塞性胆管炎,肝膿瘍,転移性肝癌からの肝不全など様々な疾患が鑑別対象になった.CT・MRIでは転移性肝腫瘍の診断であった.超音波検査では,S6に境界明瞭で楕円形,内部不均一な38×25mmの等エコー腫瘤が認められた.腫瘤の辺縁は低エコーで一部肝表面へ連続して描出された.腫瘤内部は不均一で石灰化や可動性のある点状エコーが認められた.血流信号なし.RFA後の転移性肝癌相当部で内部に液状化を示唆する所見が認められたことから肝膿瘍が疑われた.一時悪化により敗血症性ショックとなったが抗菌薬投与,肝膿瘍ドレナージにより食欲,意識共に著明な改善を認め,病態安定につき転院となった.
【考察】
転移性肝腫瘍に対してRFAを施行した部位に超音波検査にて液体流動像がある事が決めてとなりRFA後肝膿瘍の診断に至った症例を経験した.転移性肝腫瘤と肝膿瘍はCT画像上しばしば鑑別困難な場合がある.ヨード造影剤を用いたDynamic CTなどは画像を経時的にとらえる事が可能であり2者の鑑別に有用であるが,腫瘤径が小さいものでは鑑別困難な事が多い.近年,EOB-プリモビストを用いた造影MRIの登場で2者の鑑別が比較的容易に行われるようになった.しかしこの造影剤は胆管排出性であり,高ビリルビン血症を呈する患者には原則適応外となる.本症例は,高ビリルビン血症のため造影剤を用いることができず診断に難渋したが,超音波検査でリアルタイムに腫瘤内部の性状を観察することによって転移性肝腫瘍と肝膿瘍を鑑別することができた.超音波検査は,画像検査のなかでも非侵襲的かつ動的に画像を描出できるという特徴がある.本症例はその特徴を生かし,CT,MRIでは診断し得なかった小膿瘍の診断に至った稀な症例と考えられた.