Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓2

(S556)

限局性結節性過形成例の再検討

Hepatic FNH:clinical sign & sonographic findings

安達 千尋1, 鈴木 克典1, 渡邊 真由美2, 佐藤 純子2, 渡部 多佳子3, 大山 葉子4, 長沼 裕子5, 石田 秀明3

Chihiro ADACHI1, Katsunori SUZUKI1, Mayumi WATANABE2, Junko SATOU2, Takako WATANABE3, Yoko OHYAMA4, Hiroko NAGANUMA5, Hideaki ISHIDA3

1山形県立中央病院消化器内科, 2山形県立中央病院中央検査部, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4秋田組合総合病院臨床検査科, 5市立横手病院内科, 6Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 7Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 8Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

1Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Yamagata Prefectural Central Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Yamagata Prefectural Central Hospital, 5Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 6Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 7Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 8Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
肝限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)は比較的まれな疾患ではある
が画像診断,特に造影超音波検査が診断確定に有用とされており,a)早期血管相の車幅状血管構造(spoke wheel appearance),b)それに連続してみられる病変全体の均一濃染,c)造影剤注入30〜60秒以後からの時相で持続する(周囲肝組織と同様な)均一な染まり,を示しこの特徴的な所見からFNHは造影超音波検査でほぼ診断確定可能であると考えられている.
【対象と方法】
我々は今回,上記の典型的な造影超音波所見を呈しFNHと最終診断しえた11例(男性6例,
女性5例,年齢23-80歳,平均:46.3歳)(腫瘤径:6mm〜5cm,平均:16mm,腫瘤数1(8例),2(2
例),3(1例))を対象に,その臨床像と画像診断所見を再検討し若干の知見を得たので報告する.なお,この11例には肝硬変例やオスラー病例はいなかった.
使用診断装置:東芝社製:AplioXG,500.GE社:LogiqE9,日立アロカ社製:Ascendus,Preilus,Prosound F75.超音波造影剤はソナゾイド(第一三共社)を用い,造影方法は通常の肝腫瘍のそれに準じた.
【結果】
臨床像:1)一過性の腹部不快感3例,無症状8例であった.2)当院で初めて病変を指摘された例8例,他院でCTで小多血性病変の存在からHCCを疑われ当院での精査を希望し来院した例が2例あった.3)高度脂肪肝(またはNAFLD)合併(2/11)でこの2例は中等度の肝機能異常と糖尿病を伴っていた.4)ピル服用は一例のみで,他の10例ではホルモン剤などの服用なかった.
画像診断:1)CT,MRI(8例に施行)では(FNHに特徴的な)車軸状血管構築は描出出来なかった(0/8).2)1例に病変を介した動静脈短絡が認められた.3)超音波所見:a)Bモード:halo(2/11,その2例は高度脂肪肝例),lateral shadow(0/11),hump sign(肝辺縁に位置した4/4),b)カラードプラ:車軸状血管構築を明瞭に描出したもの(0/11),腫瘤内部に多数の血流信号を認めたもの(9/11),動静脈短絡(1/1).c)造影超音波検査時視野角を狭め通常(15/sec前後)の2〜3倍のframe rate(high frame造影超音波)で所見を観察した3例では所見の判定に差異は無かったがhigh frameでの観察のほうが所見が一層明瞭となった.
【まとめと考察】
肝限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)は未だに発生機序に関しては不明な点が多い腫瘤性病変である.欧米の症例ではピル服用の若年女性が多数を占めるが本邦の症例では該当する薬物服用例は少なく,その意味でも欧米の例とは発生機序が異なる可能性がある.今回の11例に関しても原因不明が10例を示した.我々の症例では,a)男性例が多数を占めた,b)男性例6例中2例に高度の脂肪肝,糖尿病がみられ,FNH発生機序,特に男性におけるそれを考えるうえで興味深い結果で
あった.なお,最近オスラー病では肝内にFNH様結節がみられるという報告がある.一方,今回の症例には含まれていなかったが,肝細胞癌の早期に車幅状血管構造が見られる,という報告もあり注意すべき点である.今後更に多数の症例でFNHの臨床像と超音波所見の検討を続けたい.