Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓2

(S556)

HCCと鑑別困難な肝腫瘍の2症例

Two cases of liver tumors difficult to differentiate from HCC

内藤 雅文, 村井 一裕, 松村 有記, 北 久晃, 河合 知代, 西塔 民子, 中田 悠紀, 濱野 美奈, 千葉 三保, 伊藤 敏文

Masafumi NAITO, Kazuhiro MURAI, Yuki MATSUMURA, Hisaaki KITA, Tomoyo KAWAI, Tamiko SAITO, Yuuki NAKADA, Mina HAMANO, Miho CHIBA, Toshifumi ITO

大阪厚生年金病院内科

Department of Internal Medicine, Osaka Kosei-Nenkin Hospital

キーワード :

限局性結節性過形成(Focal Nodular Hyperplasia:FNH)はHCCと鑑別困難な場合がある.今回我々は,FNHを疑うものの確定診断に到らず経過観察している2症例を経験した.
【症例1】
50歳代女性.皮膚潰瘍のため当院皮膚科通院中,胸部精査の造影CT検査で肝S8に20mm大のSOLを指摘された.CT上は動脈相で濃染し,平衡相でisodensityとなる腫瘤であった.ソナゾイド造影超音波検査(US)では,S8に20mm大の低エコーSOLを認め,血管相早期から全体が明瞭な均一濃染を呈し,後血管相では欠損を示した.EOBMRIでは,同SOLはT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号,造影早期相で強く濃染され造影後期相でも遷延しており,肝細胞相では辺縁部で取り込みが亢進した淡い欠損として描出された.またS4にも同様のSOL(12mm大)が指摘された.肝炎ウイルスマーカー陰性で背景肝疾患を持たず,またHCC関連腫瘍マーカーも正常であったため,FNHを第一に考え経過観察する方針となった.3か月後のEOBMRIおよび1年後の造影USとEOBMRIではサイズの増大なく,造影所見もほぼ同様であり,現在も経過観察中である.
【症例2】
80歳代男性.検尿異常のスクリーニングの腹部USで肝S4/8に20mmのSOLを指摘された.EOBMRIでは,同SOLはT1強調画像で低信号,T2強調画像で淡い高信号,造影早期相で濃染され造影後期相でも濃染は遷延しており,肝細胞相では不均一に取り込みが亢進した腫瘤として描出された.造影CTでは,動脈相でやや不均一に濃染され,平衡相ではほぼisodensityとなった.ソナゾイド造影USでは,S4/8に20mm大の中心部高エコーで辺縁部低エコーのSOLを認め,血管相は深部病変のため血流評価が困難であったが,後血管相では淡い欠損として描出された.肝炎ウイルスマーカーはHBV既感染パターンで,抗ミトコンドリア抗体が弱陽性であったものの肝酵素はほぼ正常,HCC関連腫瘍マーカーは正常であり,本症例もFNHを念頭に現在も経過観察中である.
FNHはHCCと鑑別困難な肝腫瘤として遭遇する場合が多い.超音波医学会の診断基準によれば,血管相早期にspoke-wheel patternを呈し肝実質より濃染し,後血管相では肝実質と同等か低下する部分もある(中心瘢痕)とされるが,その診断には難渋する症例も多く経験する.当院にて各種画像診断にても確定診断に到らず経過観察している,FNHを疑う2症例に関して報告する.