Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
肝臓2

(S555)

腹部超音波検査を契機に診断された肝complicated cystについての臨床的検討

Clinical analysis of liver complicated cysts diagnosed with abdominal ultrasonography

瀧沢 義教1, 玉野 正也2, 稲垣 正樹1, 富田 順子1, 一戸 利恵1, 須田 季晋2, 植竹 知津2, 中元 明裕2, 春木 宏介1

Yoshinori TAKIZAWA1, Masaya TAMANO2, Masaki INAGAKI1, Junko TOMITA1, Rie ICHINOHE1, Toshikuni SUDA2, Chizu UETAKE2, Akihiro NAKAMOTO2, Kosuke HARUKI1

1獨協医科大学越谷病院臨床検査部, 2獨協医科大学越谷病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital, 2Departmenr of Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
近年画像診断学の進歩により肝嚢胞の検出能は向上している.通常肝嚢胞は,内部無エコーの病変として観察される.嚢胞内に出血や感染を合併したものを総称してcomplicated cystと呼び,この際には嚢胞内に点状エコーや実質エコーを認める.今回は,当院において腹部超音波検査を契機に診断された肝complicated cystついて臨床的に検討することを目的とした.
【対象と方法】
2011年4月から2013年10月に腹部超音波検査を施行した9477例を対象とした.超音波ファイリングシステムから肝嚢胞と診断された症例を抽出し,さらにcomplicated cystを指摘された症例について検討を行った.
【結果】
9477例中,肝嚢胞は1943例(20.5%)に認められた.超音波検査にてcomplicated cystと診断されたものは12例であり,全検査例の0.13%,肝嚢胞例の0.62%であった.男性5例,女性7例で,平均年齢は70.5±7.9(55〜80)歳,最大径の平均は10.4±3.1(5.5〜15)cmであった.単発が1例であり,11例は多発する嚢胞の1〜2個がcomplicated cystの所見を呈していた.発熱,腹痛を3例に認めたが,残る9例は無症状であった.12例中,通院中断などの3例を除く9例で単純および造影CTが施行され,9例全てにおいて超音波画像で指摘された実質エコーは,CTでは描出されなかった.自覚症状を有する3例は,試験穿刺またはドレナージが施行され,膿汁を確認することにより感染の合併と確定診断して迅速に治療し得た.無症状であるが急速に増大した1例は,手術にて陳旧性出血と確定診断した.同じく無症状であるが短期間で内部エコーが急激に変化した1例は,試験穿刺を施行して嚢胞内出血と確定診断した.残りの4例については,陳旧性出血を疑って慎重に経過観察中であるが,現時点では腫瘍性病変の合併はみられていない.
【考察】
Complicated cystでは,超音波にて嚢胞内に観察される点状,網状あるいは乳頭状の実質成分が,単純・造影CTでは描出されないことが画像診断上の特徴であることを確認した.発熱,腹痛などの有症状例は感染を疑い,試験穿刺またはドレナージを施行することが早期治療に重要と思われた.無症状例は嚢胞内出血である可能性が高いが,腫瘍の合併を含めて慎重な経過観察が必要と思われた.
【結論】
Complicated cystは肝嚢胞の0.62%に認めた.超音波検査で認める実質エコーが単純・造影CTで描出されないことが腫瘍性病変との鑑別に有用であると思われた.自覚症状を有する場合には,積極的にドレナージを行って感染の有無を確認すべきである.