英文誌(2004-)
一般口演 消化器
肝臓1
(S554)
硬変肝表面に突出した再生結節はなぜ腫瘍のように見えてしまうのか?数学的モデル解析
Pseudo-tumorous appearance of regenerative nodules in liver cirrhosis :computer analysis
宇野 篤1, 石田 秀明2
Atsushi UNO1, Hideaki ISHIDA2
1秋田県成人病医療センター消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター
1Department of Gastroenterology, Akita Medical Center, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital
キーワード :
【はじめに】
硬変肝表面より突出した再生結節が,腹水の存在下に腫瘤様に認識される現象は漠然ではあるが以前から指摘されてきた.再生結節を腫瘤と誤認する一つの要素としては,突出した再生結節の基部にあたかも肝実質と距離を隔てるかの様に線状の低〜無エコーが存在することであり,それにより突出部が強調され腫瘤様に認識されるものと仮定した.今回は本現象をアーチファクトの一種ととらえ,computer simulationを用いて解析検討したので報告する.
【基礎的検討(方法)】
(1)右肋間操作で肝右葉を観察したイメージを想定した.観察対象物として,肝表面を向かって右側上がりのなだらかな曲線,突出した再生結節は半円として配置した.便宜上超音波ビームは一点から扇状に放射されるものとした.肝表面の角度,再生結節の径,プローブと対象物との位置(中央で観察するか,左右辺縁部で観察するか)を変化させた.(2)プローブから腹水〜肝あるいは腹水〜再生結節と近傍の超音波伝搬経路を計算しビームの軌跡を表示した.音速は肝または再生結節:1540 m/s,腹水:1480 m/sとした.(3)超音波伝搬経路を元に,観察対象物が実際にはどのように装置に超音波画像として表示されるか計算する.(4)最後にビームの軌跡と装置に表示される対象物を重ねて表示し像を解釈・検討した.
【基礎的検討(結果)】
一般的傾向として,再生結節を中心とした対象物が画面上左側に描出されるようにとらえられ,さらに再生結節方面に向かうビームが肝表面に対しては比較的浅い角度をなしていることが本アーチファクト発生に最低限必要な条件であった.
(1)超音波ビームの屈折様式:上記条件のもと肝表面でビームが屈折し後方へ外側音響陰影が生じた.(2)再生結節が画面の辺縁部に描出されるようにすると,条件によっては肝表面で生じた外側音響陰影が再生結節基部近傍に位置して描出された.(3)再生結節近傍の肝表面と同部に入射するビームとのなす角がおおむね10度以下の条件下で本アーチファクトが再現された.
【まとめ・考察】
基本的に突出した再生結節に向かう超音波ビームが,肝表面に対しては「浅く」入射しなければ当該アーチファクトは発生しない.疑わしい所見に遭遇した場合,可能な限りスキャンする角度などを変えるなどして対象を観察することが,像の正しい解釈につながるものと思われた.