Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓1

(S547)

高輝度膵と内臓脂肪肥厚の合併所見はメタボ脂肪肝のスクリーニングにつながる

Merger findings of visceral fat thickening and fat deposition to the pancreas leads to screening of metabolic fatty liver

小宮山 恭弘1, 2, 羽生 大記2, 森 敬弘3, 大見 甫4

Yasuhiro KOMIYAMA1, 2, Daiki HABU2, Takahiro MORI3, Hajime OOMI4

1大阪鉄道病院画像診断センター生理機能検査部門, 2大阪市立大学大学院生活科学研究科栄養医科学, 3大阪鉄道病院消化器内科, 4南海電鉄株式会社健康管理センター

1Imaging Center, Osaka Railway Hospital, 2Graduate School of Human Life Science, Osaka City University, 3Division of Gastroenterological, Osaka Railway Hospital, 4Health Center, Nankai Railway

キーワード :

【はじめに】
われわれは人間ドックにおける病的意義の大きい脂肪肝の抽出に,肝腫大と肝臓前脂肪(内臓脂肪)肥厚の合併,膵輝度上昇所見を併せることで,メタボリック症候群やその予備群など,動脈硬化性疾患に対するハイリスク群の囲いこみが可能であるとの報告を行ってきた.今回は,脂肪肝に膵の高輝度群及び肝臓前脂肪(内臓脂肪)肥厚の腹部内臓3か所の脂肪蓄積群において,血液生化学データや食事・運動など生活習慣にどのような特徴が認められるかを検討し,脂肪膵(膵輝度上昇)と肝臓前脂肪肥厚の併存所見が,病的脂肪肝のスクリーニングとして有用であるかについて検討を行った.
【対象】
2011年1月から2013年3月までに人間ドックを受診し,腹部超音波を施行しアンケートに記入した31歳から85歳,平均55.3歳の男女240名.
【方法】
輝度測定は,Bモードゲインとヒストグラム測定深度を表在からの深度が5から7cmまでの範囲に入るように一定とし測定した.高脂肪膵については,腹部エコー上脂肪肝を呈する症例のうち,メタボリック症候群の診断基準の中で,3項目(血圧,脂質,耐糖能)の内,2項目以上陽性である症例を,一定の動脈硬化に対するリスクを有する脂肪肝症例ととらえ,この基準陽性をアウトカムとして,ヒストグラム計測から得られた膵脾差についてROC解析を行い,カットオフ値,膵脾差48以上を抽出した.膵脾差48以上であった118例について肝臓前脂肪厚を測定し,肝臓前脂肪厚が8mm以上あるものを内臓脂肪肥蓄積群とした.内臓脂肪肥蓄積群と肝臓前脂肪厚が8mm未満の非内臓脂肪蓄積群の2群について,血圧,身長,体重,腹部周囲径を調べた.血液生化学検査項目はAST,ALT,γGTP,Alb,総コレステロール,HDL-コレステロール,LDL-コレステロール,中性脂肪,空腹時血糖,HbA1c,血小板数を測定した.生活習慣についてはアンケート調査し,両群で比較した.
【結果】
内臓脂肪蓄積群では,非内臓脂肪蓄積群に比して,体重,BMI,腹部周囲径が有意に高値であり,メタボリックシンドローム及びその予備群の合併率も有意に高かった.血液生化学データの比較では,γGTP,空腹時血糖,中性脂肪が有意に高値を示し,ALT,HbA1cが高い傾向性を認めた.生活習慣アンケート調査では,内臓脂肪蓄積群は,20歳時点と比べ10kg以上の体重増加,1年間で3kg以上の体重増加,食習慣では朝食の欠食,就寝前2時間の遅い夕食をとる,といったメタボリック症候群のリスク項目との間に有意な相関関係を認めた.
【考察】
異所性脂肪は心臓,膵臓,肝臓,骨格筋など細胞内外の脂肪を指す場合が多いが,インスリン抵抗性に関連する異所性脂肪は,インスリン標的臓器の細胞内に蓄積される細胞内脂質である.われわれは,この異所性脂肪蓄積を超音波で簡便にとらえる指標として,脂肪肝に併存した高輝度膵と肝臓前脂肪厚測定を用いた.CTの内臓脂肪面積測定を用いずとも,超音波検査での脂肪肝,高輝度膵,肝臓前脂肪厚の3か所の異所性脂肪蓄積所見を併せると,超音波上の簡便な計測のみで,動脈硬化性疾患へのリスクが大きい脂肪肝の抽出が可能かもしれない.今後前向きな検討が必要である.