Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
消化管1

(S547)

体外式腹超音波検査が術前診断に有用であったMeckel憩室内翻の一例

Case Report:Ultrasonic diagnosis of Inverted Meckel diverticulum

關 里和1, 森 秀明1, 齋藤 大祐1, 尾股 佑1, 塚田 幾太郎1, 山田 雄二1, 西川 かおり1, 大倉 康男3, 正木 忠彦2, 高橋 信一1

Satowa SEKI1, Hideaki MORI1, Daisuke SAITOU1, Yuu OMATA1, Ikutaro TSUKADA1, Yuuji YAMADA1, Kaori NISHIKAWA1, Yasuo OKURA3, Tadahiko MASAKI2, Shinichi TAKAHASHI1

1杏林大学医学部第3内科, 2杏林大学医学部消化器・一般外科, 3杏林大学医学部病理学教室

1The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine, 2Department of Digestive Surgery, Kyorin University School of Medicine, 3Department of Pathology, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

【症例】
50代男性
【既往歴】
0歳ポリオ,30歳代脂質異常症,49歳性同一性障害
【現病歴】
急性胃腸炎で他院へ入院した際に貧血を指摘されるが,精査は行われていなかった.その後徐々に労作時の息切れが出現.前医に紹介された際にはHb5.7g/dlと異常低値を認めた.上下部消化管内視鏡検査では異常所見は見られなかったが,腹部造影CT検査で小腸の限局性壁肥厚像を認め,小腸精査目的に当科外来紹介受診.外来で施行した腹部造影CT検査で回腸遠位部に左内側壁から陥入し先進部が盲端となる腫瘤様構造を認め,Meckel憩室の内翻が疑われた.ダブルバルーン小腸内視鏡による精査目的にて当科入院となった.
【入院後経過】
入院翌日に経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行うこととし,洗腸剤内服した上で内視鏡前に体外式腹部超音波検査を行った.超音波検査では回盲部より口側に回腸と連続する13mmの嚢状構造物が認められた.構造物には層構造が見られ,盲端となっていることから真性憩室が疑われ,腸管の内腔側に位置していることから,CT検査の所見と併せMeckel憩室の内翻を第一に疑った.同日に行った経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査では潰瘍を伴う有茎性のポリープが疑われ,病変の口側の粘膜が全周性の浮腫性変化をきたしていることから腸重積を繰り返している可能性が考えられた.貧血の原因としても同病変が疑われることから外科的切除の方針とし,腹腔鏡下小腸部分切除術を行った.小腸を部分切除したところ,病変部は漿膜面が内腔に引き込まれる形になっており,内腔を確認すると4cm程内腔に索状に突出しており正常粘膜に覆われていた.病理所見上でもMeckel憩室内翻と診断された.術後経過は良好である.
【考察】
Meckel憩室は胎生期の卵黄腸管の遺残から形成される小腸の真性憩室であり,小児期に腸重積・出血・憩室炎などの合併症で発見されることが多いが,近年は成人におけるMeckel憩室の報告例も増加している.特にMeckel憩室の内翻例では腸重積,出血を合併する例が散見される.Meckel憩室内翻は医中誌で1983年から2013年の期間で検索したところ178例,成人では107例であった.Meckel憩室の診断は外科的切除による病理学的診断以外にはメッケルシンチが有用とされ,内翻例については近年ダブルバルーン小腸内視鏡やカプセル内視鏡検査による診断についても報告例があるが,依然として術前診断は困難な場合が多い.腹部超音波検査所見としては,Meckel憩室は回腸と連続した嚢胞状構造物として描出され,層構造を伴い盲端となっていることが特徴となる.嚢胞状構造物が腸管の内腔側に位置している場合は内翻が疑われる.本症と鑑別しなければならない疾患としては腸管重複症が挙げられる.今回体外式腹部超音波検査で術前に診断し得たMeckel憩室内翻の一例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.