Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
消化管1

(S546)

小児期クローン病の初診時超音波像についての検討

Ultrasonographic evaluation of the new onset of pediatric Crohn’s disease

梶 恵美里, 余田 篤, 奥平 尊, 井上 敬介, 青松 友槻, 玉井 浩

Emiri KAJI, Atsushi YODEN, Takeru OKUHIRA, Keisuke INOUE, Tomoki AOMATSU, Hiroshi TAMAI

大阪医科大学病院小児科

Department of Pediarics, Osaka Medical College

キーワード :

【緒言】
近年,炎症性腸疾患の診断や活動性評価において,体外式超音波検査(US)の有用性が報告されている.当科で経験した新規の小児クローン病(CD)の初診時の超音波像について,若干の知見が得られたので報告する.
【目的】
小児CDの確定診断前において,超音波検査の診断能と有用性の有無を検討する.
【対象と方法】
対象は2004年8月より2013年2月までの間に上部,下部消化管内視鏡検査,小腸造影,病理組織検査などで,確定診断をしたCD児24名(男女比16:8,年齢中央値11歳10か月,小腸型2名,大腸型4名,小腸大腸型18名).初診時で,CDの確定診断前の超音波所見について後方視的に検討した.装置は東芝社製Aplioで,コンベックス型探触子で腹部全般を観察後,リニア型探触子で腸管を観察した.腸管洗浄などの前処置は行っていない.
超音波での検討項目は次の7項目である.①腸管の壁肥厚の有無を観察して,その程度を計測する.②腸管壁の5層構造の消失の有無.③腸管壁の敷石様変化の有無.④病変のスキップの有無.⑤狭窄の有無.⑥病変腸管周囲の炎症による脂肪織の集積の有無.⑦腸間膜リンパ節の集族した腫脹の有無.
【結果】
①95%の症例(23名/24名)で腸管壁は肥厚を呈し,腸管壁の厚さの平均は5.1mmであった.②層構造の消失は50%(12名/24名).③敷石病変は37%(9名/24名).うち内視鏡検査と小腸造影では,11名で敷石病変が指摘されたがUSで描出できた者は9名であり2名では描出できなかった.④病変のスキップは70%(17名/24名).内視鏡検査と小腸造影では,20名で病変のスキップを指摘されたがUSで描出できた者は17名であり,3名では描出できなかった.⑤狭窄病変は4%(1名/24名).内視鏡で狭窄を確認した1名はUSでも狭窄を示唆できた.⑥病変部腸管周囲の脂肪織の集積は41%(10名/24名).⑦腸間膜リンパ節腫脹は95%(23名/24名)で認め,その平均は7.4mmであった.
【考察】
腸管壁の肥厚や,腸間膜リンパ節腫脹は,9割以上の症例で指摘できたが,これらの所見はCDに特徴的なものではなく,現段階ではUSは,内視鏡検査や小腸造影とって変わるものではない.しかしUSは消化管壁構造や,周囲の変化をとらえることができ,これらの検査を組み合わせることによって,より総合的な病状の把握が可能であった.CDの特徴的な超音波所見として,5層構造の消失はよく報告されているが,小児の初発例においては,壁肥厚はあるが,層構造がまだ観察される例が半数あり,このような例では潰瘍性大腸炎や感染性腸炎と鑑別する必要があった.消化管造影検査において,CDの特徴的所見とされている敷石様変化は今回の小児のCD診断時の超音波では比較的少なかった.この敷石様変化の形成には,一定期間,炎症が持続することが必要と思われた.
【結語】
著しい腸管壁肥厚とリンパ節腫脹は高頻度で観察され,クローン病に特徴的な所見といわれている層構造の消失や敷石病変,病変のスキップなどは,確定診断時では約半数例で観察された.
CDの確定診断には,上部,下部消化管内視鏡検査,小腸造影が必須であるが,超音波検査は簡便で低侵襲であり,特に小児の場合では侵襲的検査の前に施行すべき検査である.