Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
消化管1

(S545)

腸炎における超音波像の比較検討

Features of ultrasonography findings of colitis

今吉 由美1, 乙部 克彦1, 高橋 健一1, 安田 慈1, 辻 望1, 髙木 優1, 川地 俊明1, 熊田 卓2, 金森 明2, 多田 俊史2

Yumi IMAYOSHI1, Katsuhiko OTOBE1, Kenichi TAKAHASHI1, Shigeru YASUDA1, Nozomi TSUJI1, Yu TAKAGI1, Toshiaki KAWACHI1, Takashi KUMADA2, Akira KANAMORI2, Toshifumi TADA2

1大垣市民病院形態診断室, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
当院では日常の腹部超音波検査において,スクリーニングの場合は全例に消化管の観察を行っているが,消化管に所見が認められ病変・原因の推定を行う際には,病変の範囲や主座,エコーレベル等をもとに,臨床経過や身体所見を加味し行っている.今回,感染性腸炎と虚血性腸炎,潰瘍性大腸炎,クローン病における超音波像の比較検討を行ったので報告する.
【対象・方法】
症例は,便培養にて病原菌を特定できた感染性腸炎症例,臨床的に虚血性腸炎と診断された症例,病理組織診断された潰瘍性大腸炎症例とクローン病症例である.病変範囲,主座,壁のエコーレベル等について検討を行った.
【結果】
病変範囲は,感染性腸炎のうち,キャンピロバクターでは右半結腸に存在することが多く,ブドウ球菌とサルモネラでは左半結腸が優位であった.虚血性腸炎では全例が左半結腸に存在し,下行結腸からS状結腸の病変が全体の80%を占めた.潰瘍性大腸炎では78%が左半結腸に存在し,直腸からの連続病変を確認できたのは全体の43%であった.クローン病では,大腸病変は病変部位に傾向は見られず,小腸病変は回腸・回盲部に多い傾向が見られた.また,半数にskip lesionが認められた.腸管壁の層構造とエコーレベルについては,キャンピロバクターやサルモネラでは層構造は温存され,粘膜・粘膜下層ともに肥厚し,粘膜下層のエコーレベルが高い傾向にあった.ブドウ球菌では層構造は明瞭と不明瞭が約半々であり,粘膜下層優位の肥厚が多く,エコーレベルは高い傾向にあった.虚血性腸炎では80%が層構造不明瞭で低エコーを呈した.潰瘍性大腸炎では層構造明瞭で,粘膜・粘膜下層ともに肥厚し,粘膜下層のエコーレベルが高い傾向にあった.クローン病では,ほとんどの症例で層構造が不明瞭あるいは消失し,低エコーを呈した.身体所見では,虚血性腸炎では腹痛・下痢・下血を主訴とすることが多く,潰瘍性大腸炎では下血を主訴とすることが多かった.クローン病では腹痛や下痢はあるが下血は見られなかった.
【まとめ】
消化管の超音波検査では,主訴や臨床経過を考慮し,病変の範囲を特定し層構造の観察を詳細に行うことにより,腸炎の鑑別が可能であることが示唆された.