Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
消化管1

(S544)

体外式超音波検査による胃腫瘍性病変の診断

Transabdominal ultrasonographic diagnosis for gastric tumor

児玉 尚伸

Masanobu KODAMA

守山市民病院内科

Internal Medicine, Moriyama City Hospital

キーワード :

【背景および目的】
近年,超音波診断装置の進歩により体外式超音波検査で低侵襲に存在診断可能な胃腫瘍性病変の症例が増え,体外式超音波検査はリンパ節,肝臓等への進展度診断も可能である.そこで内視鏡検査で診断された胃腫瘍性病変に対し体外式超音波検査を施行し,その存在診断能(描出能)および部位診断,深達度診断,進展度診断について検討した.
【対象および方法】
超音波診断装置(東芝SSA-770A)を用い適宜飲水法(水道水200-450cc)を併用した.H25年3月よりH25年11月に内視鏡検査で診断され,生検にて組織学的に確認された胃腫瘍性病変6例を対象とした.5例は内視鏡検査にて胃病変発見後に超音波検査を施行し,1例は超音波検査で胃腫瘍性病変(進行胃癌)を発見した後,引き続き進展度診断を行った.腹部CT検査は全例に施行した(64列CT).症例の内訳は早期胃癌1例(Ⅱa+Ⅱc型SM癌),進行胃癌4例(2型1例,3型1例,4型1例,5型1例),胃カルチノイド1例(頂部びらんを伴った粘膜下腫瘍様隆起)であり,部位は前庭部1例,胃角部2例,胃体部3例であった.年齢は71-84歳(平均77歳),性別は男性4例女性2例であった.存在診断能(描出能力)を疾患別,大きさ別,部位別,深達度別に検討した.エコー上の部位診断は幽門輪より約4-5cm口側を胃角部とし最大の胃壁肥厚を示す部位を病変の中心部と診断した.エコーでの深達度診断は病変中心部において胃壁全体(粘膜下層を越えて全層)が同程度に低エコーを示すとき,深達度MP以深(進行胃癌)と診断し,粘膜下層内までの低エコーを示す場合,深達度SMまで(早期胃癌)と診断することとした.進行胃癌はリンパ節転移,肝転移,腹水について腹部CT所見および手術時の病理所見と比較した.
【結果】
A.描出能力:疾患別存在診断能は進行胃癌4/4例100%,早期胃癌0/1例(0%),胃カルチノイド1/1例(100%)であった.進行胃癌は著明な壁肥厚として描出され,進行胃癌の胃壁厚は18-29mm(平均21mm)であった.胃カルチノイドは粘膜下層内の限局性腫瘤として描出された.大きさ別の存在診断能は0-2cm 1/2例(50%),2-4cm 0/0例,4cm以上4/4例(100%)であった.部位別存在診断能は胃前庭部1/1例(100%),胃角部2/2例(100%),胃体部2/3例(67%)であり,深達度別ではM0/0例,SM1/2例,MP以深4/4例(100%)であった.B.深達度診断および部位診断:進行胃癌全例でエコーのよる深達度診断および病変部位診断は内視鏡診断と一致した.胃カルチノイドは,エコーのよる深達度診断,部位診断について内視鏡診断,超音波内視鏡診断(細径プローブ)と一致した.C.進展度診断:1/6例にてリンパ節腫大を指摘し腹部CT検査,手術所見の結果と一致していた.肝転移についてはエコー上,肝臓転移を認めた症例はなく全例腹部CT所見と一致していた.腹水は2/6例(1例モリソン窩微量,1例モリソン窩および脾臓周囲に中等量)にて腹水を認め,その内1例は腹水が微量なため腹部CTでは指摘できなかった.
【考察および結論】
体外式超音波検査は2cm以下の胃体上部に存在する早期胃癌は指摘できなかったが,4cm以上の進行胃癌は全例存在診断でき,部位診断も内視鏡検査と一致していた.体外式超音波検査による進行胃癌の進展度診断(リンパ節転移,肝転移,腹水)はCT診断とほぼ同様の結果であり,手術症例では病理所見とも一致していた.