Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 消化器
胆道1

(S543)

多彩な超音波画像の変化を呈した原発性硬化性胆管炎の一例

A case of primary sclerosing cholangitis who presented with unique temporal change in ultrasound images

櫻井 幸1, 2, 朝比奈 靖浩1, 3, 宍戸 華子1, 井津井 康浩1, 中川 美奈1, 柿沼 晴1, 東 正新1, 東條 尚子2, 渡辺 守1

Yuki NISHIMURA-SAKURAI1, 2, Yasuhiro ASAHINA1, 3, Hanako SHISHIDO1, Yasuhiro ITSUI1, Mina NAKAGAWA1, Sei KAKINUMA1, Seishin AZUMA1, Naoko TOJO2, Mamoru WATANABE1

1東京医科歯科大学消化器内科, 2東京医科歯科大学医学部附属病院検査部, 3東京医科歯科大学肝臓病態制御学

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical and Dental University, 2Clinical Laboratory, Medical Hospital of Tokyo Medical and Dental University, 3Department of Liver Disease Control, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【はじめに】
経時的に急激な超音波画像所見の変化を示し,診断に苦慮した原発性硬化性胆管炎の一例を経験したので報告する.
【症例】
26歳女性,21歳時に健診にて肝胆道系酵素上昇を指摘されたため,2008年12月に当科を紹介受診した.同時期の腹部エコー上は,胆泥を認め,肝実質エコーがやや不均一な印象があったものの,その他胆管を含め明らかな異常所見は認められなかった.BMI 25程度であったため当初NAFLDも疑われ,食事運動療法や肝庇護療法も施行されたが,肝障害は遷延したため,2010年9月に第一回目の肝生検を施行した.病理組織では,脂肪化は全く目立たず,肝細胞の小型化や偽胆管の増生,偽腺管状配列が目立つ所見であった.その後も肝障害の改善は乏しく,2011年1月に施行された腹部エコーでは,肝実質全体に大小様々な境界不明瞭な高エコー域の散在を認めた.エコー上は胆管の異常所見は確認されなかった.同時期に施行されたEOB-MRIでは,肝細胞相での取り込み低下は明らかではなかった.その後貧血の進行などもあり,2012年7月に腹部エコーを施行したところ,前回エコー所見とは異なり,肝内に限局性に境界明瞭な4mm大の高エコー領域を数個認めた.再精査が必要と考えられ2012年8月に再度入院,第2回目肝生検を施行された.既存の胆管がほとんど消失しており辺縁部に偽胆管が増生し,門脈域や中心静脈周囲の繊維化が進行していたが,原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎の典型像とは異なる印象であり,診断確定には至らなかった.以後また外来にて肝庇護療法等の継続で経過観察となっていたが,2013年3月施行の腹部エコーでは,前回には限局性であった高エコー領域が肝全体にびまん性に拡大していた.同3月のEOB-MRI所見では,線維化を反映すると考えられる肝内の不均一な肝細胞相での取り込み低下域が散在し,肝両葉の肝内胆管の口径不整や狭窄,一部拡張が認められた.また造影剤の胆道への排泄がみられず,胆汁流出障害も存在した.悪性疾患は経過からも考えにくいものの,PIVKAⅡ1873という著明な上昇なども認めたため,第3回目肝生検を施行する方針となった.2回目の生検時に門脈域の線維性拡大による架橋が出現していたが,3回目生検では,肝実質域を取り囲むまでに線維化が進展しており,pre LCの状態であった.超音波画像にて描出された高エコー領域は,病理所見との対比で,肝実質炎に伴う肝細胞の亜小葉性壊死と考えられた.門脈域の像で,小葉間胆管の消失及び細胆管増生を伴った強い線維化が見られたため原発性硬化性胆管炎を疑い,後日MRCP・ERCPも施行し,胆管の減少と,胆管壁の不整像および肝内胆管狭小化を認めたため,原発性硬化性胆管炎と確診した.肝線維化の進行が急激であり,現在肝移植のタイミングを検討しているところである.
【考察】
多彩な肝内エコー画像の変化を示した原発性硬化性胆管炎の一例を経験した.肝生検所見では非特異的所見も多く,診断に苦慮した.原発性硬化性胆管炎の診断においては,直接胆道造影以外の画像所見や病理所見について十分なコンセンサスは得られていない.急激な線維化の進行を伴い,経時的に様々な腹部エコー所見を呈した貴重な原発性硬化性胆管炎の一例であると考えられた.