Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・バルサルバ洞動脈瘤/冠動静脈瘻

(S537)

恒久的ペースメーカ移植術により生じた冠動脈瘻を経胸壁心エコー図検査で観察した一例

A case of acquired coronary artery fistula after permanent pacemaker implantation observed by transthoracic echocardiography

金子 明弘, 銕 佑介, 田辺 慶司, 大西 衛, 岡島 年也, 植田 充典, 宮島 透

Akihiro KANEKO, Yusuke KUROGANE, Keiji TANABE, Mamoru ONISHI, Toshiya OKAJIMA, Atsunori UEDA, Toru MIYAJIMA

宝塚市立病院循環器内科

Cardiology, Takarazuka City Hospital

キーワード :

【症例】
77歳,男性
【主訴】
両下腿浮腫
(現病歴)平成22年に高度房室ブロックの診断で恒久的ペースメーカ移植術を施行され,右房と右室にスクリューインリードを留置された.術前の冠動脈造影検査では異常所見を認めなかった.平成25年6月に急性胆嚢炎発症の際,両下腿浮腫及び,体重増加を認めたため急性右心不全の精査加療目的に当科へ紹介された.
(入院後経過)経胸壁心エコー図検査では,左室下壁基部の壁運動低下および右心室,右心房の拡大,右室収縮能の低下による機能性高度三尖弁閉鎖不全症が認められた.心不全加療後,虚血性心疾患疑いにて負荷心筋シンチグラフィを行ったが,明らかに虚血を示唆する所見は認めなかったものの,下壁に軽度の潅流低下を認めた.左室壁運動障害と右室収縮能低下の原因精査目的に冠動脈造影及び右心カテーテル検査を行ったところ,右冠動脈近位部に有意狭窄を認めた他,3年前には認められなかったが,右冠動脈鋭角枝末梢から右室のリード留置部位周囲に新たに冠動脈瘻が出現していた.右心カテーテル検査では,右房圧上昇認めたが,肺高血圧は認めず,右心系内でのO2 stepupもなかった.またQp/Qsの上昇は認めず,シャント血流は少量であると考えられた.また,右冠動脈近位部狭窄による虚血評価目的や冠動脈瘻による盗血現象評価目的に,同部位のアデノシン負荷心筋血流予備量比(FFR)を測定した.結果,右冠動脈の全領域においてFFR低下を認めなかったため,右冠動脈近位部狭窄に虚血所見はなく,冠動脈瘻による盗血現象も軽微であると考えられた.後日,経胸壁心エコー図検査によって冠動脈瘻の確認を行ったが,右室リード先端が下壁側の乳頭筋内に留置されており,同部位より拡張期に出現するシャント血流を確認することができた.
【考察】
今回我々は,恒久的ペースメーカ移植術により生じた冠動脈瘻を経験し,各種検査の結果,現段階では冠動脈瘻自体に対する追加治療は不要と判断したため,経過観察とした.恒久的ペースメーカ移植術後に冠動脈瘻が出現したという文献的報告は過去になく,臨床の場においても,恒久的ペースメーカ移植術後の合併症として,後天性冠動脈瘻が出現するとは考えられていない.その為,恒久的ペースメーカ移植術後に冠動脈造影をルーチンワークとして行うことは稀であるが,経胸壁心エコー図検査を用いてリード先端に異常なカラードップラー等が無いか確認する必要もあると考える.
【結語】
今回我々は,恒久的ペースメーカ移植術により生じた冠動脈瘻を経験した.冠動脈瘻もペースメーカ移植術に伴う合併症の一つとして認識し,経胸壁心エコー図検査を用いて確認する必要があると考える.