Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・バルサルバ洞動脈瘤/冠動静脈瘻

(S536)

大動脈弁周囲膿瘍を合併したバルサルバ動脈瘤破裂の1症例

Ruptured Sinus of Valsalva Aneurysm with Aortic Root Abscess

川口 和子1, 岡田 昌子3, 瀬尾 浩之2, 青山 孝信2, 藤井 弘通2, 笹子 佳門2, 森 智美1, 小川 恭子1, 寺本 美穂1, 内藤 雅文3

Kazuko KAWAGUCHI1, Masako OKADA3, Hiroyuki SEO2, Takanobu AOYAMA2, Hiromichi FUJII2, Yoshikado SASAKO2, Tomomi MORI1, Kyoko OGAWA1, Miho TERAMOTO1, Masafumi NAITOU3

1大阪厚生年金病院中央検査室, 2大阪厚生年金病院心臓血管外科, 3大阪厚生年金病院臨床検査科

1Department of Central Laboratory, Osaka Kouseinenkin Hospital, 2Division of Cardiovascular Surgery, Osaka Kouseinenkin Hospital, 3Department of Clinical Laboratory, Osaka Kouseinenkin Hospital

キーワード :

糖尿病で通院中の60歳代の男性.入院8日前から気分不良,発熱があり近医で抗生物質を処方されるも改善せず,全身倦怠感著明となり当院外来受診する.炎症反応上昇を認め,2013年9月緊急入院となった.聴診上連続性雑音を認め,胸部レントゲン上CTR 42%と心拡大を認めず,心電図は心拍数104/分と洞性頻脈を認めた.初診時血液検査にてCRP 26.7 mg/dl,WBC 17200/μlと炎症所見が高値のため精査目的で心臓超音波検査を施行した.心臓超音波検査ではバルサルバ洞に嚢状構造物と右室に向かう加速血流を認め,連続性の左右シャント血流を検出した.三尖弁中隔尖側に可動性に富む11×9 mmの腫瘤性病変を認め,大動脈弁弁尖の肥厚とそれに伴う中等度大動脈弁閉鎖不全,大動脈弁周囲にlow echoic lesionを認めた.入院時血液培養では肺炎球菌が2回陽性であった.感染性心内膜炎によるバルサルバ動脈瘤破裂と診断され,同日緊急手術となった.術中所見では,大動脈弁右冠尖基部と三尖弁中隔尖に疣腫を,大動脈弁輪膿瘍,大動脈弁輪から右室への交通を認めた.Freestyle 25mmの人工弁にて大動脈弁基部置換術を施行し,弁輪形成術,左室右室交通パッチ閉鎖術を施行した.術後6週間抗生物質にて治療したが感染の再発なく無事退院の運びとなった.本症例において以下の3つの機序が推察されたが,術中所見からは鑑別が困難であった.
1.先天性バルサルバ動脈瘤の症例で,糖尿病の通院中は無症状で経過し,感染性心内膜炎を契機に右室系に破裂を来たした.
2.感染性心内膜炎で大動脈弁と弁周囲に病巣を形成し,そののちにバルサルバ洞や心室中隔膜様部に穿孔を来たし,三尖弁にも感染が及んだ.
3.無症候性心室中隔欠損に感染性心内膜炎を併発し,大動脈弁・三尖弁・バルサルバ洞に感染が及び,穿孔を来たした.
入院時は,全身倦怠感が主訴であったが,致死的な状況を迅速に診断・治療し救命可能であった症例について文献的考察を加え,報告する.