竹田 泰治¹, 大谷 朋仁¹, 大西 俊成¹, 塚本 泰正¹, 倉谷 徹², 澤 芳樹², 中谷 敏³, 山本 一博⁴, 真野 敏昭¹, 坂田 泰史¹

Yasuharu TAKEDA¹, Tomohito OHTANI¹, Toshinari OHNISHI¹, Yasumasa TSUKAMOTO¹, Toru KURATANI², Yoshiki SAWA², Satoshi NAKATANI³, Kazuhiro YAMAMOTO⁴, Toshiaki MANO¹, Yasushi SAKATA¹

¹大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学, ²大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学, ³大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学, ⁴鳥取大学病態情報内科学

¹Department of Cardiovascular Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, ²Department of Cardiovascular Surgery, Osaka University Graduate School of Medicine, ³Department of Health Sciences, Osaka University Graduate School of Medicine, ⁴Division of Cardiovascular Medicine, Department of Molecular Medicine and Therapeutics, Faculty of Medicine, Tottori University

キーワード :

【目的】
我々はDiastolic wall strain（DWS;（左室収縮末期後壁厚−左室拡張末期後壁厚）÷左室収縮末期後壁厚）が左室伸展性を反映し，駆出率の保たれた心不全の予後を予測することを報告しているが，臨床における後負荷依存性については，未だ不明である．本研究では，開心術を伴わず弁置換され，術直後からの経胸壁心エコー観察が可能である経カテーテル的大動脈弁置換術（TAVR）が行われた大動脈弁狭窄患者を用い，左室後負荷の軽減直後より慢性期にDWSがどのように変化するのかを検討した．
【方法】
大阪大学医学部附属病院にてEdwards-SAPIEN Valveを用い，TAVRを施行した連続38症例のうち，局所的壁運動異常を認めず，左室駆出率が保たれている24症例を対象とし，TAVR前，2日後，6ヶ月後に経胸壁心エコー検査を行い，検討した．
結果（表）：TAVR施行により，術後2日には，大動脈弁位最大圧較差，平均圧較差は軽減し，術後6ヶ月にても維持された．左室駆出率には術前術後を通して有意な変化を認めなかった．左室拡張末期後壁厚，左室重量，relative wall thickenssは術後6ヶ月にて有意な改善を認めた．E波の減衰時間，左房径は術後6ヶ月には術前に比し有意な改善を認めた．DWSは術前に比し，後負荷が改善した術後2日目には改善を認めなかったが，左房径，E波の減衰時間の改善を認めた術後6ヶ月では有意な改善を認めた．
【結論】
左室肥大とDWSは直接的には相関しないことをすでに我々は確認しており，DWSは左室後負荷には依存せず，心筋性状の改善に伴い変化する指標であると考えられた．