月城 泰栄¹, 大西 哲存¹, 千村 美里¹, 谷口 泰代¹, 矢坂 義則¹, 川合 宏哉¹, 芳井 孝輔², 藤本 恵子², 世良 博史², 都留 正人²

Yasue TSUKISHIRO¹, Tetsuari ONISHI¹, Misato CHIMURA¹, Yasuyo TANIGUCHI¹, Yoshinori YASAKA¹, Hiroya KAWAI¹, Kousuke YOSHII², Keiko FUJIMOTO², Hiroshi SERA², Masato TSURU²

¹兵庫県立姫路循環器病センター循環器科, ²兵庫県立姫路循環器病センター検査・放射線部

¹Department of Cardiology, Himeji Cardiovascular Center, ²Department of Clinical and Radiographic Laboratory, Himeji Cardiovascular Center

キーワード :

【目的】
非虚血性拡張型心筋症（DCM）患者において，心臓超音波検査および心臓カテーテル検査で得られる血行動態指標とともに，心筋ストレイン指標がいかに予後に影響するかを検討した．
【方法】
2009年5月から2012年12月に心不全で入院したDCM患者のうち，初期加療後に心臓カテーテル検査および心臓超音波検査を施行した81症例（平均年齢59歳，女性27例）を対象とした．心臓カテーテル検査にて左室拡張末期圧（LVEDP）・平均肺動脈楔入圧（PCWP）・平均肺動脈（PAP）・平均右房圧（RAP）を測定した．また，心臓超音波検査にて左室拡張末期径（LVEDD）・左室収縮末期径（LVESD）・左室駆出率（LVEF）・僧帽弁流入弁口血流速波形の拡張早期波（E）・心房収縮波（A）・E波の減衰時間（DT）を，二次元（2D）スペックルトラッキング法を用いて左室の短軸（Radial）・円周（Circumferential）・長軸（Longitudinal）方向の左室全体ストレイン（Global Strain）を測定した（RGS,CGS,LGS）．予後は死亡もしくは心不全再入院をエンドポイントと定めた．エンドポイントに達した症例群と達しなかった症例群の2群間比較を行い，Cox比例ハザード解析で各指標と予後との関連を調べ，ROC曲線解析を用い予後予測に適した指標を検討した．
【結果】
平均観察期間28か月において，全81症例のうち11人がエンドポイントに達した．2群間比較の結果，PCWP，PAP，RAP，LVESD，LVEF，RGS，CGS，LGSで有意差をみとめた（すべてp＜0.05）．またCox比例ハザード解析の結果，LVESD，LVEF，DT，PCWP，PAP，RAP，RGS，CGS，LGSと予後との間に有意な関連がみとめられた（すべてP＜0.05）．ROC曲線解析では，心筋ストレイン指標RGS・CGS・LGSは他の血行動態指標よりも大きい曲線下面積をもち，有意な予測精度をもつ指標であることが示された．
【結語】
心臓超音波検査および心臓カテーテル検査で得られる血行動態指標の低下は予後不良と関連し，2Dスペックルトラッキング法による心筋ストレインは，DCM患者の予後予測において，従来のエコー図測定値や観血的指標に匹敵する有用な指標になりうる．