岡崎 麻利¹, 藤田 圭二¹, 中山 弘美¹, 金本 優¹, 三宅 ひとみ¹, 中原 弓恵¹, 正木 修一¹, 宗政 充², 松原 広己²

Mari OKAZAKI¹, Keiji FUJITA¹, Hiromi NAKAYAMA¹, Yuu KANAMOTO¹, Hitomi MIYAKE¹, Yumie NAKAHARA¹, Syuuichi MASAKI¹, Mitsuru MUNEMASA², Hiromi MATSUBARA²

¹独立行政法人国立病院機構岡山医療センター臨床検査科, ²独立行政法人国立病院機構岡山医療センター循環器科

¹Clinical Laboratory, National Hospital Organization Okayama Medical Center, ²Cardiology, National Hospital Organization Okayama Medical Center

キーワード :

【はじめに】
心臓では原発性腫瘍よりも転移性腫瘍が多く認められ，転移性心臓腫瘍は担癌患者の剖検例で7.1％に発見されるとの報告がある．転移性心臓腫瘍の多くは無症状であり，生存中に診断されることは少ない．
【症例】
50歳代　女性
【現病歴】
2010年左頸部腫瘤を自覚したが放置していた．2011年8月に頤下にも腫瘤を形成し急速に増大した．同年10月，リンパ節生検をしたところメルケル細胞癌と診断された．翌月，耳下腫瘤切除術，遊離皮弁術，両頸部郭清術を施行．同月中旬より化学療法が施行され，その後は再発所見なく経過は良好であった．2012年1月，右頸部郭清術施行し，この際の検査では悪性所見は認められなかった．2013年4月，経過観察中の病院でのPET-CTにて心臓転移が疑われる所見があったため，精査目的にて当院紹介となった．
【心電図】
洞調律，心拍数64/分
【胸部造影CT】
右房・左房に接して内部が不均一なmass像を認めた．
【心エコー】
右房付近の心外膜に大きさ50mm×40mmで内部が不均一なmass様エコーを認めた．この構造物による血流障害はなく，また心腔内にmass様エコーは認めなかった．心嚢液は少量〜中等量貯留していたが，心タンポナーデは認めなかった．
【経過】
転移性心臓腫瘍の摘出は右室壁の広範囲の切除が必要であり，また腫瘍内を右冠動脈が通過しているため，完全な摘出は困難であると判断され化学療法の方針となった．
【考察】
メルケル細胞癌は悪性度の高い皮膚癌であるが，高齢者に多く50歳代での発症は稀である．また，メルケル細胞癌は血行性転移およびリンパ行性転移を生じ，様々な部位への転移が報告されているが心臓への転移は文献的にも少なく，非常に稀である．
【結語】
今回我々は，心臓転移を生じたメルケル細胞癌の症例を経験したので報告する．