英文誌(2004-)
一般口演 循環器
症例報告・腫瘍
(S528)
腫瘍内出血により僧帽弁に嵌頓した左房粘液腫の一例
奈良 育美, 飯野 貴子, 寺田 舞, 渡邊 博之, 伊藤 宏
Ikumi NARA, Takako IINO, Mai TERADA, Hiroyuki WATANABE, Hiroshi ITO
秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学
キーワード :
症例は70歳代男性.労作時呼吸困難を主訴に来院.心エコー検査にて,拡張期に僧帽弁に嵌頓する5 cm大の表面平滑な左房内腫瘤を認めた.TEEでは,心房中隔に腫瘍茎を認める他,同部から腫瘍内への流入血流と腫瘍内から左房内腔への流出血流,腫瘍内部のモヤモヤエコーが観察された.冠動脈造影で右冠動脈末梢より派生する栄養血管が同定され,さらに同血管から腫瘍内への血流ジェットと,その後の腫瘍染影も確認された.以上より,栄養血管の破綻により巨大血腫を形成し僧帽弁に嵌頓した左房腫瘍と診断,緊急で摘出術を施行した.術前診断と一致して腫瘍内部は血液で充満しており,病理組織検査で粘液腫と診断された.本症例は,腫瘍内出血により腫瘍増大,僧帽弁嵌頓を引き起こしたが,経過中腫瘍壁一部が破綻し腫瘍内への流入/流出血流の均衡が保たれた結果,腫瘍内部のモヤモヤエコー出現,更なる腫瘍増大の抑制,突然死回避がもたらされたものと推測される.