Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
心機能2

(S526)

3病態(甲状腺疾患,虚血性心疾患,心筋症)における左室等容性弛緩時間の特徴

Measurements of Left Ventricular Isovolumic Relaxation Time in Hyper/Hypothyroidism, Ischemic Heart Disease and Hypertrophic/Dilated Cardiomyopathy

田中 悦子1, 西川 伸一2, 提坂 和代2, 鈴木 駿輔2, 島田 俊夫2, 坂本 裕樹1, 土井 修1, 野々木 宏1, 神原 啓文1

Etsuko TANAKA1, Shin-ichi NISHIKAWA2, Kazuyo SAGESAKA2, Shunsuke SUZUKI2, Toshio SHIMADA2, Hiroki SAKAMOTO1, Osamu DOI1, Hiroshi NONOGI1, Hirohumi KANBARA1

1静岡県立総合病院循環器内科, 2静岡県立総合病院臨床検査科

1Department of Cardiology, Shizuoka General Hospital, 2Department of Clinical Laboratory Medicine, Shizuoka General Hospital

キーワード :

【背景】
左室等容性弛緩時間(IRT)は,主に細胞内カルシウム(Ca)除去とトロポニン(Tn)-Ca感受性によって規定される.甲状腺ホルモンは筋小胞体によるCa取り込みを促進することが知られている.虚血性心疾患(IHD)では,ATP欠乏により筋小胞体Ca取り込みは抑制される.一方,遺伝子変異による肥大型心筋症(HCM)と拡張型心筋症(DCM)の多くがTn-Ca感受性の異常(HCM;亢進,DCM;低下)を伴うことがわかってきた.したがって,IRTは,上記の3病態において特徴的な値を呈することが予測される.
【目的】
左室流入/流出パルスドプラ血流速波形を同時記録した画像から左室IRTを計測し,甲状腺疾患(機能亢進症/低下症),IHD,および心筋症(HCM/DCM)におけるIRTの特徴を明らかにする.
【対象】
疾患群として,①甲状腺疾患;11例,②IHD(心筋虚血があると考えられる症例);29例,③HCM;10例,④DCM(β遮断剤を使用していない症例);6例を対象とした.上記①,②に対して,明らかな基礎心疾患のない頻拍性不整脈症例;30例を,③に対して,左室肥大を来たす高血圧症(HT)例;17例を,④に対しては左室拡張を来たす中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症(AR)/僧帽弁閉鎖不全症(MR)例;13例を対照とした.
【方法】
心尖部三腔像のカラー血流表示を行い,僧帽弁と大動脈弁に近接し左室流入血流と流出血流が接する部分にサンプルボリュームを設定し,流入/流出パルスドプラ波形を同時記録した.この記録画面から直接IRTを計測した.この方法を用いることによって,測定誤差を少なくすることができる.疾患群のIRT値を,それぞれの対照群と,疾患群間で比較検討した.
【結果】
甲状腺機能亢進症例のIRT(46.2±2.5ms;mean±SEM)は対照(83.5±2.1ms)に比べ著明に短縮(p<0.001)し,機能低下症(117.2±5.2ms,p<0.001)とIHD(118.4±3.2ms,p<0.001)では延長していた.HCM(134.6±7.0ms)では,対照(87.1±2.7ms)に比べ著しく延長(p<0.001)し,DCMでは短縮(57.3±6.9ms vs. 82.2±2.6ms,p<0.05)していた.IRT標準値は70-90msとされており,対照群の平均値はいずれもこの範囲内にあった.
【結論】
IRTは,筋小胞体Ca取り込みが促進される甲状腺機能亢進症では短縮し,抑制される機能低下症とIHDでは延長していた.一方,Tn-Ca感受性が亢進するHCMでは延長し,低下するDCMでは短縮していた.心エコー法により簡便に測定できるIRTは,病態に関わるまだ利用されていない情報を含有しており,その活用は臨床的に意義のあることと考えられる.さらに症例を重ねて検討する.