Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・その他2

(S522)

高齢女性に持続性心室頻拍を合併した不整脈原生右室心筋症(ARVC)の一例

A case of arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy in an old-aged woman

福山 知香1, 安達 和子2, 中村 琢2, 菅森 峰2, 遠藤 昭博2, 高橋 伸幸2, 吉冨 裕之3, 田邊 一明2

Chika FUKUYAMA1, Tomoko ADACHI2, Taku NAKAMURA2, Takashi SUGAMORI2, Akihiro ENDOU2, Nobuyuki TAKAHASHI2, Hiroyuki YOSHITOMI3, Kazuaki TANABE2

1島根大学医学部附属病院卒後臨床研修センター, 2島根大学医学部附属病院循環器内科, 3島根大学医学部附属病院臨床検査部

1Postgraduate Clinical Training Center, Shimane University Hospital, 2Department of Cardiology, Shimane University Hospital, 3Department of Laboratory Medicine, Shimane University Hospital

キーワード :

【症例】
69歳女性
【主訴】
嘔吐・下痢
【現病歴】
2013年7月X-1日21時頃から下痢・嘔吐があり23時半に近医が往診したところ収縮期血圧70 mmHg台の血圧低下と心室頻拍(VT)がありX日1時半に当院へ救急搬送された.来院時は意識清明,心拍数205 /分,持続性心室頻拍(VT),血圧88/66 mmHgであった.電気的除細動を行い心房細動となったがすぐにVTとなり再度除細動を行い洞調律となった.その後の心電図(ECG)でaVRのST上昇,V3-6のST低下,完全右脚ブロック(CRBBB)がみられ,経胸壁心エコー図検査(TTE)で右心系の拡大,左室心尖部のhypokinesis,H-FABP陽性であった.緊急冠動脈造影(CAG)を施行したが冠動脈の狭窄なく虚血性心疾患は否定された.CAG施行時にVTとなり除細動を行った.除細動後のECGではCRBBB,V1〜3のε波,V1-4の陰性T波,QT延長がみられた.繰り返すVTの精査加療目的で入院となった.入院後のTTEでは左室拡張末期径/収縮末期径=54/43 mm,心室中隔壁厚/後壁厚=10/10 mm,左室駆出率=39%(m-Simpson),左房容積係数=75 ml/m2と左心系の拡大と左室全体の壁運動異常が見られた.また,右室基部径=38 mm,右室中部径=41 mm,右室長軸径=72 mm,右室面積変化率=22%,三尖弁輪収縮期移動距離=11 mmと右心系の拡大や右室全体的な壁運動低下があり,特に右室心尖部,右室流出路に瘤状拡張がみられた(図).高度三尖弁逆流があり左室の変形がみられた.心室内に血栓形成はみられなかった.各種検査より他の心筋症は否定されRevised Task Force Criteria(2010年)の診断基準を満たしARVCと診断した.VTの再発予防にアミオダロン,β遮断薬の内服を継続し,X+14日ICD埋込術を施行した.
【考察】
ARVCは約5000人に1人の有病率とされており,若年者の心臓突然死の原因の11〜20%と言われている.右室心筋の線維脂肪変性により右室拡大や壁運動異常,右室起源のVTの原因となる常染色体優性遺伝の疾患である.また,左室にも変性がみられることがあり両心不全や致死的不整脈を引き起こし突然死の原因となる.本症例では,家族歴のない高齢女性に発症し,左室の壁運動異常も見られ両心不全を呈していた.ARVCの診断においてRevised Task Force CriteriaではTTEによる右室の定量的尺度を用いた基準に改訂され,特異度は95%とされている.本症例においてもこれを満たしARVCと診断した.
【結語】
高齢女性に両心不全を呈し持続性VTを合併したARVCの症例を経験した.