Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・その他2

(S522)

三尖弁閉鎖不全症を合併した卵円孔開存に伴う低酸素血症の一例

Hypoxemia due to patent foramen ovale and tricuspid regurgitation

下浦 広之, 田中 秀和, 松本 賢亮, 土岐 啓己, 今西 純一, 三好 達也, 元地 由樹, 望月 泰秀, 佐和 琢磨, 平田 健一

Hiroyuki SHIMOURA, Hidekazu TANAKA, Kensuke MATSUMOTO, Hiromi TOKI, Junichi IMANISHI, Tatsuya MIYOSHI, Yoshiki MOTOJI, Yasuhide MOCHIZUKI, Takuma SAWA, Kenichi HIRATA

神戸大学大学院循環器内科学分野

Division of Cardiovascular Medicine, Department of Internal Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
卵円孔は胎生期に形成される心房中隔の開口部で,出生後,呼吸の開始により自然に閉鎖するが,中には成人に達しても自然閉鎖が見られない場合がある.剖検例や経食道心エコー図による検討では成人の約10-25%認められ,多くの症例は無症状であるが,奇異性塞栓症あるいはplatypnea-orthodeoxia syndromeを来す症例は外科的,経皮的な閉鎖術の適応となる.
【症例】
約10年前にベトナムから来日した43歳男性で,粟粒結核,心室中隔欠損症の既往がある.2009年頃より労作時の呼吸困難が出現し,仕事の継続が困難となっていた.前医を受診し,低酸素血症を指摘されて精査を行うも,原因を明らかに出来ず経過観察となっていたが,その後も徐々に症状が増悪して日常生活に支障をきたすようになった(NYHAⅢ)ため,精査目的に当院へ紹介となった.安静時室内気下にPaO2 51.9mmHgと著明な低酸素血症を認め,約100mの歩行でSpO2は80%台へ低下し,強い呼吸困難感を伴った.当院で行った経胸壁心エコー図検査では,右心系が著明に拡大しており,弁が離解し,高度の三尖弁閉鎖不全を認めていた.左心機能は正常であった.経食道心エコー図検査を施行し,撹拌生理食塩水によるコントラストエコーを行ったところ,著明な右左短絡が確認された.この右左短絡はValsalva負荷を行わずとも認められ,また,三尖弁逆流ジェットが収縮期に心房中隔を押し上げており,卵円孔開存を助長していた.各種画像検査等では低酸素血症を来すような呼吸器疾患は認められず,低酸素血症の原因は右左短絡によるものと判断し,後日卵円孔閉鎖術,三尖弁形成術および心室中隔欠損症閉鎖術を施行し,症状の改善を得た.術中所見で三尖弁後尖は弁尖がほぼ欠損しており,三尖弁低形成と考えられた.
【結語】
今回我々は,三尖弁低形成による高度三尖弁逆流を伴った卵円孔開存により,右左短絡および低酸素血症を来した稀な症例を経験したので報告する.