Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・その他2

(S521)

右内頚静脈の血流波形が右心不全の診断に有用であった3症例 頚静脈波,視診の連関

Pulsed Doppler echocardiogram of the right jugular vein in the cases of right sided heart failure and correlation to the jugular venous pulse of neck

本田 幸治1, 松竹 勉2, 岩本 健太2, 才木 久美子2, 三浦 八恵2, 盛谷 睦子2, 高橋 和宏1, 浦 幸子1, 山近 史郎3

Yukiharu HONDA1, Tsutomu MATSUTAKE2, Kenta IWAMOTO2, Kumiko SAIKI2, Yae MIURA2, Chikako MORIYA2, Kazuhiro TAKAHASHI1, Sachiko URA1, Shiroh YAMACHIKA3

1医療法人宏善会諫早記念病院循環器内科, 2医療法人宏善会諫早記念病院臨床検査室, 3医療法人春回会井上病院循環器内科

1Department of Cardiovascular Medicine, Isahaya Memorial Hospital, 2Medical Technologist, Isahaya Memorial Hospital, 3Department of Cardiovascular Medicine, Inoue Hospital

キーワード :

右内頸静脈は上大静脈とほぼ直線状にあり右房圧を良く反映する.肺静脈血流速波形が左室拡張不全の重症度を示すことは良く知られているが,右心不全の診断に怒張や拍動が重要視される右内頸静脈の血流速波の報告は少ない.今回,顕著な頸静脈拡張と拍動を認めた端緒例を含め,血流速波形の記録が有用であった3症例を報告.脈波と視診にも言及した.血流速波と脈波の記録は仰臥呼吸時,それぞれ7.5MHzのリニアプローベ,脈波センサを用いて行った.まずコメデイカル7名(30から50歳代)を対象とした.右頸静脈血流速波形は,収縮期波(S波)拡張期波(D波)の二峰性で,大多数はS波優位であった.これらを脈波と対比すると両者波形の増減はミラーイメージを示した.
《症例1肥大型心筋症拡張相,DDDPM植え込み後》心不全増悪期の頸静脈血流波は拡張期血流D波優位で収縮期波S波はほぼ消失,心不全改善により明瞭なS波が出現した.増悪期の頸静脈波は,血流D波に呼応したy谷の急峻な降下があり,続けて二階段様の立ち上がりを生じた.これは座位,視診で静脈の拍動として診ることができた.心不全回復期には生じた血流S波に一致してx谷が明瞭化した.《症例2 慢性心不全》座位で右内頚静脈の顕著な怒張と拍動を認めた端緒例,内径は座位で1心拍ごと12mm⇔20mmに変動,仰臥位では右側26mm(左側16mm)にほぼ固定,Mモードでみた内腔径を右心内圧と対比すると,座位最大径の時相は右房v波(18mmHg)に重なり,拡張早期の右房右室の圧較差で右室へ流入(血流速D波)して虚脱した.続く頸静脈拍動は右房圧のy谷からの立ち上がりと,右室拡張期圧のdip and plateauの速やかな圧上昇に一致し,右心系の拘束性拡張不全を示していた.《症例3 虚血性心筋症》心不全増悪なく安定,頸静脈血流波は呼吸変動あり終始S波優位,脈波は血流波とミラーイメージでac波がy波より高い正常パターンであった.頸静脈波ac,vは仰臥位で視診できた.
まとめ
(1)右頸静脈の血流速波形はパルスドプラエコーで比較的容易に記録でき,右心不全の診断に有用であることが示唆された.
(2)正常例と右心不全のない慢性心不全例
【症例3】
ではS波,D波の2峰性,右心不全例1,2ではD波優位またはD波のみとなり,症例1では心不全改善に合わせて大きなS波が回復した.
(3)血流速波形の増減とミラーイメージにある頸静脈内圧を反映する頸静脈波や視診もまた一連の事象として改めて診ることができると思われた.