Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・その他2

(S520)

上行大動脈の拡大が機序の異なる体位変換性呼吸困難に関与したと思われる1例

Two Kinds of Mechanisms for Paroxysmal Postural Dyspnea Associated with Dilatation of Ascending Aorta: A Case Report

天野 里江1, 山田 博胤1, 2, 發知 淳子2, 林 修司2, 坂東 美佳2, 西條 良仁2, 西尾 進1, 山尾 雅美1, 添木 武2, 佐田 政隆1, 2

Rie AMANO1, Hirotsugu YAMADA1, 2, Junko HOTCHI2, Shuji HAYASHI2, Mika BANDO2, Yoshihito SAIJO2, Susumu NISHIO1, Masami YAMAO1, Takeshi SOEKI2, Masataka SATA1, 2

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科

1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital

キーワード :

【症例】
66歳,男性.59歳時に呼吸困難と下腿浮腫を主訴に来院し,座位で増強する低酸素血症を認め,platypnea-orthodeoxia症候群と診断された.その原因として,卵円孔開存と亀背および上行大動脈の拡大(径55mm)による心房中隔の位置異常が指摘され,卵円孔閉鎖術が施行された.7年後,再び呼吸困難が出現し当科を受診した.風呂掃除などで下向きが長く続くと息切れが増強した.心エコー検査では,左室径は正常,左室壁運動異常を認めず,左室収縮能は正常であった.攪拌生理食塩水を右肘静脈から投与したが,残存シャントは指摘できなかった.Valsalva洞径は47mmと拡大し,中等度のARを認めた.また拡大した上行大動脈が右室流入路側に張り出していた.Color Doppler法で右室流入路にモザイクシグナルを認め,右室流入血流速度は約120cm/sと加速していた.座位で前かがみに体位を変換すると,モザイクシグナルが増強しさらに右室流入血流が加速した(peak V≒180cm/s).経食道心エコー検査では,上行大動脈の最大径は55mmであり,上行大動脈が右室側に張り出し,右室流入路狭窄の原因であると思われた.右室流入血流速波形は臥位でE<A,左側臥位はE>Aと変化した.コントラスト心エコー法を施行したが残存シャントは指摘できなかった.また,胸部造影CT検査では,上行大動脈が70mm×60mm程度と7年前より拡大していた.上行大動脈の拡大は手術適応であり,拡大した上行大動脈が右室流入路を圧排していることも呼吸困難の一因と考え,心臓血管外科へ紹介した.上行大動脈から左総頸動脈までの人工血管置換術と大動脈弁置換術が施行された.術後の心エコー図検査では,右室流入路のモザイクシグナルは消失し,右室流入路血流速度は約100cm/sであった.現在外来通院中で,日常生活では呼吸困難は出現しておらず,リハビリテーションのため施行したエルゴメーター負荷でも症状は出現していない.
【まとめ】
本例では,上行大動脈の拡大が卵円孔開存によるplatypnea-orthodeoxia症候群の一因となり,さらに卵円孔閉鎖術後に拡大を続けた上行大動脈が,右室流入路狭窄を生じて再び呼吸困難をきたした.これらの病態把握に心エコー検査が有用であった.