Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・その他1

(S519)

全身の動脈硬化とMRを有し皮膚所見から弾性線維性仮性黄色腫と診断し得た1例

A case of Pseudoxanthoma Elasticum(PXE)with mitral regurgitation

宮地 佑希, 諸岡 花子, 山本 裕美, 谷口 貢, 植木 博之, 平野 豊, 宮崎 俊一

Yuki MIYAJI, Hanako MOROOKA, Hiromi YAMAMOTO, Mitsugu TANIGUCHI, Hiroyuki UEKI, Yutaka HIRANO, Shunichi MIYAZAKI

近畿大学医学部循環器内科

Faculty of Medicine, Kinki University, Division of Cardiology, Department of Medicine,

キーワード :

【症例】
64歳の男性.
【主訴】
労作時呼吸困難.
現病歴;学童期から心雑音と不整脈を指摘されるも精査されていなかった.40歳時に意識消失を来し,陳旧性心筋梗塞に伴う心室頻拍と判断された.若年の心筋梗塞の原因は明らかではなく,冠動脈瘤の存在から川崎病の関与が疑われていた.2012年8月初旬よりの労作時呼吸困難から当科受診となり,心エコーにて高度の僧帽弁逆流を認め,心不全の診断で入院となった.
【既往歴】
37歳時:右腎動脈瘤・動静脈奇形にて腎動脈塞栓術施行,44歳時消化管出血,57歳時網膜色素線条症.
【家族歴】
姉:弁膜症,兄:網膜色素線条症.
入院時身体所見;身長:168cm,体重:45kg.BT:36.5℃,HR:77回/分,血圧:99/50mmHg,
肺野:呼吸音 清,心音:整,心尖部に収縮期雑音Levine 3度を聴取する.頸部,両上肢肘関節屈側,腹部に粒状の黄色腫がみられる.
入院時身体所見;ABI:右:0.64  左:測定不能.
【心エコー】
LVDd/Ds62/51mm,IVST 8mm,LVPWT 6mm,LAD 52mm,FS 18%,LVEF 31%,MR:Ⅲ°(逆流量:volumetric法:69ml/beat),TR:Ⅱ°.
冠動脈造影;LADはSeg 6で閉塞し,Seg 12分岐直後に冠動脈瘤を認めその先で閉塞していた.RCAは4PDからLADに側副血行路を認めていた.下肢動脈造影;両側SFAは閉塞しており,膝窩動脈以下については,右下肢はATAのみ流れているが,左下肢は3分枝ともに閉塞していた.
左室造影;左室は全周性に壁運動低下・特に下壁はsevere hypokinesis,MR:sellersⅢ度であった.
皮膚の黄色腫に対して皮膚生検が施行され,弾性線維性仮性黄色腫と診断された.
【考察】
弾性線維性仮性黄色腫では進行性に弾性線維の石灰化と変性,断裂が発生し,皮膚変色,視力障害,虚血症状を引き起こす疾患である.有病率は2万5000人〜10万人に1人であり,その原因としては,16p13.1上のABCC6遺伝子が関連していると言われている.表現型の違いにより皮膚症状・眼症状のみであることもある.症状としては,10〜20歳代に黄白色扁平丘疹〜白色網状斑が関節屈側・頸部・口腔粘膜部に出現する.眼には網膜の脆弱性により出血・血管新生を引き起こす.そして,心血管については,内弾性板の変性石灰化により冠動脈狭窄や閉塞,下肢動脈閉塞や脳梗塞を引き起こすと言われている.本症例は心不全の診断で入院となり,多枝冠動脈狭窄,両下肢動脈閉塞,脳梗塞,胃潰瘍,網膜色素線条症の既往があることと,頸部の皮膚生検結果から弾性線維性仮性黄色腫と診断した.皮膚病変・眼病変以外には消化器症状・脳血管障害・心血管障害と症状が多岐にわたるため診断は困難である事が多い.本疾患では僧帽弁閉鎖不全症が合併しているが,症例報告として散見される程度である.
【結語】
全身の動脈硬化性病変と僧帽弁閉鎖不全症を呈し,特徴的な皮膚所見と生検結果から弾性線維性仮性黄色腫と診断し得た1例を経験したので報告した.