Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・その他1

(S518)

食後の胸痛を契機に発見された食道裂孔ヘルニアによる左室圧排を認めた1例

Left ventricular compression caused by large hiatal hernia

田村 潮, 蔭山 徳人, 奥村 宇信, 寺田 菜穂, 原田 顕治, 山本 浩史, 藤永 裕之

Ushio TAMURA, Norihito KAGEYAMA, Takanobu OKUMURA, Naho TERADA, Kenji HARADA, Hirofumi YAMAMOTO, Hiroyuki FUJINAGA

徳島県立中央病院循環器内科

Department of Cardiology, Tokushima Prefectural Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
食道裂孔ヘルニアは日常診療において頻繁に遭遇する疾患である.加齢とともに増加増大し逆流性食道炎や嚥下困難などを引き起こすことが知られている.また,心臓に対しては食道裂孔ヘルニアが左房を圧排することにより心不全症状や失神を呈した報告が散見されている.今回我々は,食後の胸痛を契機に発見された,巨大な食道裂孔ヘルニアにより左房のみならず左室にまで圧排が及んだ稀な症例を経験したので報告する.
【症例】
76歳,男性.
【主訴】
左前胸部痛.
【現病歴】
数年前から巨大な食道裂孔ヘルニアによる逆流性食道炎のためPPIによる内服加療中であった.白内障の術前検査目的で来院時に院内で昼食を摂取したところ左前胸部痛が出現した.胸腹部CTにて,内容物を含む巨大食道裂孔ヘルニアにより,左房および左室の圧排されている所見を認めた.また心臓超音波検査では圧排された左室中部で収縮後期にピークを有する著明な加速血流を認めた.冠動脈造影では有意狭窄は認められなかった.後日施行した空腹時の心臓超音波検査のでは,左室圧排および左室中部の加速血流は軽減していた.以上より,食事に伴う食道裂孔ヘルニアの増大が左室の圧排を来し,胸部症状に関連していると判断した.当院外科にて,ヘルニア根治術が施行された.術後,食事摂取直後の心臓超音波検査を再検したところ,左室の圧排や左室中部での加速血流の所見は認められなかった.以後胸部症状の再発なく経過している.食道裂孔ヘルニアによる左室の著明な圧排が左室内の著明な圧較差を来し,胸部症状を呈した稀な症例を経験したので文献的考察を加え報告する.