Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・その他1

(S517)

原発性肺腺癌の経過中に心エコー図で心臓転移が示唆され,剖検により確認し得た1例

A Case of Myocardial Metastasis of Primary Lung Cancer

辻村 卓也, 渡部 徹也, 神田 貴史, 須永 晃弘, 上松 正朗

Takuya TSUJIMURA, Tetsuya WATANABE, Takashi KANDA, Akihiro SUNAGA, Masaaki UEMATSU

関西労災病院循環器内科

Cardiovascular Medicine, Kansai Rosai Hospital

キーワード :

症例は70歳代女性.既往症にびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(病期Ⅱ期),直腸癌(高分化型管状腺癌,T1N0M0)がある.2011年,両側原発性肺腺癌(右肺腺癌:病期ⅢA,左肺腺癌:病期ⅠA期)と診断され,両側肺部分切除術を施行した.術後,化学療法,放射線療法を施行したが,徐々に呼吸状態の悪化を認めていた.2013年1月,呼吸困難を主訴に当院受診.胸部単純X線画像で心拡大(心胸郭比:66%),体表12誘導心電図でV2・V3誘導でST上昇を認め,経胸壁心エコー図検査を施行したところ,左室拡張末期径:36 mm,左室収縮末期径:26 mmと心拡大は認めず左室駆出率は56%であったが,心嚢液貯留(右室前面:約5 mm,左室後壁側:約35 mm)を認めた.また,左室側壁側および中隔側に約20 mm×20 mm大の低エコー輝度の異常エコー像を認め,同部位の壁運動低下を認めた.患者の希望により入院後は緩和治療を行い,第5病日に呼吸不全のため死亡となった.病理解剖では,心エコー図検査で認めた低エコー輝度の異常エコー像に一致して心筋内に最大径50 mmの結節を含む大小多数の白色腫瘤性病変を認めた.組織学的に既往症の肺腺癌(低分化型腺癌)の像に類似すること,肺病変と連続性を認めないことから,同病変は肺腺癌の心臓転移と診断した.肺癌の剖検例では心臓(心膜・心筋含む)転移は高率で29-53%と報告されるが,そのうち心筋転移を認めるのは全剖検例の約10%と報告されている.本症例において,原発性肺腺癌の経過中に心エコー図で心臓転移が示唆され,剖検により確認し得た1例を経験したので,病理結果も踏まえ報告する.