Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・血栓,卵円孔

(S513)

HIT(Heparin-Induced Thrombocytopenia)により巨大左室内血栓を形成した一例

A case of large left ventricular thrombus due to HIT(Heparin-Induced Thrombocytopenia)

寺田 舞, 渡邊 博之, 新保 麻衣, 佐藤 和奏, 飯野 貴子, 藤原 美貴子, 鬼平 聡, 伊藤 宏

Mai TERADA, Hiroyuki WATANABE, Mai SINBO, Wakana SATO, Takako IINO, Mikiko FUJIWARA, Satoshi KIBIRA, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Department of Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

症例は60歳男性.拡張型心筋症,うっ血性心不全にて近医に入退院を繰り返していた.平成25年3月心不全悪化のため入院となった.入院時の経胸壁心臓超音波では,EF16.5%と収縮能低下を呈し,LVDd 82mmと左室拡大を認めた.また乳頭筋レベルの左室内心室中隔に付着する径14mm大の内部low echoicで辺縁isoechoicな可動性のある異常構造物を認めた.経食道心臓超音波では,心室中隔側の異常構造物に加えて,左室の側壁に付着し可動性がなく輝度が高い壁在構造物を認めた.拡張型心筋症に伴う左室内血栓と判断し,心不全治療に加え,ヘパリン投与を開始した.ヘパリン投与から8日目に施行した経胸壁心臓超音波では,左室内心室中隔に付着していた異常構造物がさらに巨大化し,ゆらゆらと可動性を有していた.内部low echoicで辺縁isoechoicであった.血液学的検査ではヘパリン投与後血小板が18.3万/lから5.7万/lまで減少していたため,HIT(Heparin-Induced Thrombocytopenia)を疑い,ヘパリンからアルガトロバンに変更した.その後の検査でHIT抗体陽性であった.その後アルガトロバンからワーファリンに変更し,左室内巨大血栓は縮小した.しかし,心不全は改善せず,多臓器不全のため永眠された.剖検所見では基部〜心尖部にかけて左室の側壁に残存する壁在血栓が認められた.
本症例では左室内血栓の治療のために行ったヘパリン治療でHITが誘発され,血栓の巨大化を呈した.HITに左室内血栓を合併したという報告は今までほとんどみられておらず,稀少例であるため,ここに報告する.