Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
循環器1

(S505)

好酸球増加症における左室心内膜障害の検討

Left Ventricular endocardial dysfunction in patients with hypereosinophilic syndrome

山本 哲志1, 田中 秀和2, 松本 賢亮2, 三好 達也2, 今西 純一2, 栗本 千代1, 今西 孝充1, 林 伸英1, 平田 健一2, 河野 誠司1

Tetsushi YAMAMOTO1, Hidekazu TANAKA2, Kensuke MATSUMOTO2, Tatsuya MIYOSHI2, Junichi IMANISHI2, Chiyo KURIMOTO1, Takamitsu IMANISHI1, Nobuhide HAYASHI1, Ken-ichi HIRATA2, Seiji KAWANO1

1神戸大学医学部付属病院検査部, 2神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野

1Department of Clinical Laboratory, Kobe University Hospital, 2Department of Internal Medicine, Division of Cardiovascular Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
好酸球増加症(HES)は全身臓器に好酸球浸潤を伴う疾患である.HESにおける心病変の合併症は高確率で認められると報告されており,血栓形成を伴う心内膜の線維化は塞栓症,拡張型心筋症様変化や弁膜症は心不全の原因となる.従来HESの予後は不良と考えられていたが,副腎ストロイドや免疫抑制薬などの使用により予後は改善した.HESにおける心血管病変の合併は予後を規定する最も重要な因子であるため,心病変の早期検出と,それに伴う早期治療介入が望まれる.
【方法】
当院でHESと診断され,心血管合併症を有さずかつ左室駆出率が保持された20例(HES群)を対象とした.平均年齢は58±19歳,女性は9例(45%),平均左室駆出率は66.2±7.8%(全例50%以上)であった.また,年齢,性別,左室駆出率をマッチさせた正常コントロール群20例(N群)を比較対象とした(年齢:59±14歳,女性8例(40%),平均左室駆出率は68.7±6.4%).東芝社製Aplio Artidaを用い,左室拡張末期容積,左室収縮末期容積,左室駆出率,左房径を測定し,左室流入血流速度波形と僧帽弁輪部速度波形からE/E’を算出した.さらに,2次元スペックルトラッキング法を用いて,global radial(GRS), circumferential strain(GCS)を傍胸骨左室短軸像における心尖部,中部,基部レベルの3レベルの全16領域を平均化して算出した.Global longitudinal strain(GLS)は心尖部長軸像,二腔像,四腔像から得られた全18領域を平均化して算出した.Strain値は絶対値で表示した.
【結果】
左室容積,左房径,E/E’に関してはHES群とN群の間に有意差を認めなかった.スペックルトラッキング法を用いた解析において,HES群はN群に比してGLSは有意に低下いていたが(11.2±2.1%vs. 13.7±2.2%p<0.01),GRS,GCSに関しては有意差を認めなかった(GRS: 32.49±8.3%vs. 37.41±8.17%vs. p=0.08,GCS: 14.3±2.3%vs. 16.6±3.2%vs. p=0.08).
【結語】
HESでは心血管合併症を有さない段階でも,左室心内膜障害が発生している可能性が示唆された.左室心内膜障害は心内膜の血栓形成,さらにその後に起こり得る左室心筋の線維化ならびに壊死との関連も示唆されるため,心内膜障害の検出により早期の治療介入の可能性が示唆される.