Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・先天性心疾患/三尖弁逆流

(S502)

肺高血圧症合併の単心房術後残存シャント根治術前後を心エコーで観察し得た一例

A case report of residual shunt with severe pulmonary hypertension after atrial septation for single atrium

堀添 善尚1, 高崎 州亜1, 植屋 奈美1, 茶圓 秀人1, 窪田 佳代子1, 水上 尚子2, 湯浅 敏典1, 木佐貫 彰1, 大石 充1

Yoshihisa HORIZOE1, Kunitsugu TAKASAKI1, Nami UEYA1, Hideto CHAEN1, Kayoko KUBOTA1, Naoko MIZUKAMI2, Toshinori YUASA1, Akira KISANUKI1, Mitsuru OOISHI1

1鹿児島大学病院心臓血管・高血圧内科学, 2鹿児島大学病院臨床検査部

1Cardiovascular Medicine and Hypertension, Kagoshima University Hospital, 2Division of Clinical Laboratory, Kagoshima University Hospital

キーワード :

【症例】
46歳,女性.
【主訴】
労作時息切れ.
【経過】
5歳時,単心房と診断されたが経済的理由から手術は受けず.1990年(26歳),単心房に対してatrial septation手術を施行した.2007年8月(43歳),労作時息切れを自覚し,当科へ精査目的に入院した.atrial septation術後の残存シャントあり,心エコーでは推定右室収縮期圧(RVSP)87mmHgと高度肺高血圧あり,左→右シャントのみ.右心カテにて,肺体血流比2.12,肺血管抵抗8.1WU,肺体血管抵抗比0.40にて手術適応と判断した.2007年/10月,心房中隔残存シャント閉鎖術予定で当院心臓血管外科へ転科したが,手術当日に大量喀血を認め,手術を中止した.肺高血圧・喀血のコントロール目的で当科へ転科し,肺血管拡張薬のボセンタンを導入した.RVSP 77mmHgへ軽減し,喀血も消失したが,再手術の希望がなくなり,内科的治療で経過観察となった.その後も喀血の再発なく経過した.2010年/9月(46歳),再び手術の希望あり,再評価目的で当科へ入院となった.心エコーではRVSP 91mmHg.右心カテにて,肺体血流比2.0,肺血管抵抗10.2WU,肺体血管抵抗比0.46にて手術適応と判断した.2010年11月,当院心臓血管外科にて残存欠損孔パッチ閉鎖術を施行した.術直後,心エコーにてRVSP 56mmHg,肺高血圧の残存あり,シルデナフィル・ベラプロスト併用を開始した.術後半年後の2011年/6月,心エコーにてRVSP 46mmHg,労作時息切れや喀血などの自覚症状なく,肺高血圧の悪化は認めず,経過良好であった.
【総括】
atrial septation術後の残存シャントに対して根治術を予定したが,高度肺高血圧とそれに伴う喀血のため中止となった.ボセンタンを導入することで肺高血圧の改善と喀血の消失を認め,外科手術に踏み切ることが可能となり,術後も肺血管拡張薬の併用を行うことで安定した肺高血圧コントロールおよび良好な臨床経過が得られた.未修復の成人心房中隔欠損の肺高血圧に対して,肺血管拡張薬を投与し肺高血圧の軽減を図ったうえで根治術を行うことで,良好な経過をえられるとの報告が増えている.薬剤導入の効果判定および経過観察に,心エコーによる右室収縮期圧の推定は有効な方法の一つである.
【結語】
高度肺高血圧症合併の単心房術後シャント残存例に肺血管拡張薬を導入したうえで根治術を実施し,良好な経過をたどった一例を心エコーで観察し得た.