Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・弁膜症

(S500)

冠状静脈洞内に疣腫を認め感染性心内膜炎の診断に難渋した冠動脈瘤の一例

A Case of Coronary Fistula with Vegetation in Coronary Sinus

小板橋 俊美, 猪又 孝元, 亀田 良, 前川 恵美, 深谷 英平, 阿古 潤哉

Toshimi KOITABASHI, Takayuki INOMATA, Ryou KAMEDA, Emi MAEKAWA, Hidehira FUKAYA, Junya AKO

北里大学医学部循環器内科学

Cardiovascular Medicine, Kitasato University

キーワード :

症例は64歳,男性.2013年8月より全身倦怠感,発熱,寝汗が持続し,複数の医療機関で心臓超音波検査を含む精密検査を施行されたが,原因不明であった.同年12月に当院紹介受診となり,血液培養からα-Streptococcusが検出され,全身CT検査では腎臓,脾臓,肺の塞栓所見を認めたことから,感染性心内膜炎が強く疑われた.しかし,経胸壁心臓超音波検査では有意な弁機能障害や心内シャントはなく,弁,弁輪,心腔内に疣腫を疑う所見を認めず,Dukeの診断基準を満たさなかった.一方で,異常なカラーシグナルを伴う不整形な冠状静脈洞と左冠動脈の拡張に気付き,直ちに経食道心臓超音波検査を施行した.その結果,左冠動脈から冠状静脈洞につながるモザイクシグナルを呈する異常管腔が観察され(右下図),右房開口部付近の冠状静脈洞内には可動性を有する2つの腫瘤を認めた(左図).腫瘤付着部位は,接する内腔との間に生じた乱流がふきつけており(右上図),内膜傷害の原因になりうると考えられた.以上の超音波検査所見より,左冠動脈から冠状静脈洞に開口する冠動脈瘻に合併した感染性心内膜炎と診断した.
冠動脈瘻は稀な先天性疾患であり,5〜10%に感染性心内膜炎を併発すると報告されている.冠動脈瘻の診断は,拡張・蛇行した冠動脈やシャント血流の同定によるが,大動脈弁レベル短軸像における詳細な観察や広めに設定したカラードプラを要し,弁や心腔を中心としたルーチンの描出では気づかれないことも多い.また,冠状静脈洞内の疣腫の検出は経胸壁心臓超音波検査では極めて困難である.臨床所見で感染性心内膜炎を強く疑う際には,弁や心腔内に疣腫を認めなくても,本症例のような特殊な病態を念頭に置き,迅速かつ積極的な経食道心臓超音波検査を施行することが重要である.