Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 循環器
症例報告・弁膜症

(S499)

感染性心内膜炎により僧帽弁と大動脈弁の二弁に弁瘤を認めた一症例

One case of mitral and aortic valve aneurysms secondary to infective endocarditis

宇宿 弘輝1, 堀端 洋子3, 角田 等1, 野田 勝生1, 大嶋 秀一1, 柳 茂樹2, 許 敞一2, 中津 太郎2, 田村 暢成2

Hiroki USUKU1, Youko HORIBATA3, Hitoshi SUMIDA1, Katsuo NODA1, Shuichi OSHIMA1, Shigeki YANAGI2, Shouichi KYO2, Taro NAKATSU2, Nobushige TAMURA2

1熊本中央病院循環器科, 2熊本中央病院心臓血管外科, 3国立療養所菊池恵楓園内科

1Department of cardiology, Kumamoto Chuo Hospital, 2Department of Cardiovascular Surgery, Kumamoto Chuo Hospital, 3Department of Internal Medicine, National Sanatorium Kikuchi Keifuen

キーワード :

59歳男性.糖尿病,高血圧症,甲状腺癌手術の既往があり近医で加療されていた.平成25年2月に39度台の発熱を認めるも抗生剤・解熱鎮痛剤の使用により2週間程度で解熱した.同年7月下旬から夜間の発熱と食欲不振が出現し抗生剤を使用するも解熱せず.経胸壁心臓超音波検査で僧帽弁の疣贅と重症大動脈弁閉鎖不全症を認めたため緊急入院となった.経食道心臓超音波検査では僧帽弁の左房側に隆起した15mm×14mmの巨大な疣贅を認めるものの僧帽弁逆流は認められず.大動脈弁に疣贅は認めないものの,弁瘤と重症大動脈弁逆流あり.血液培養検査でstreptococcus mitisが検出されたため感染性心内膜炎と診断した.心不全状態に陥っておらず,頭部MRI検査で多発脳梗塞を認めたため内科的治療を選択した.まずはスルバシリンとゲンタシンの投与を開始し速やかに感染のコントロールは可能であった.第4病日に急性心筋梗塞を発症したため左前下行枝Seg7に対し冠動脈バルーン拡張術を施行した.第18病日にフォローアップのため経食道心臓超音波検査を施行したところ,大動脈弁の弁瘤と重症大動脈弁逆流は不変であったが,僧帽弁の疣贅は消失しており,同部位に巨大な弁瘤と重症僧帽弁逆流を認めた.第27病日には不安定狭心症のため左前下行枝Seg9に冠動脈ステント留置術を施行した.その後,全身状態落ち着いたため,第53病日に手術[大動脈弁置換術+僧帽弁形成術+冠動脈バイパス術(LITA-LAD,Ao-RA-LCX14,Ao-SVG-4PD)]を施行した.大動脈弁はLCCとNCCの弁中央部に弁瘤を認め,RCCは逸脱していた.僧帽弁は前尖に巨大な弁瘤を認め弁尖側に1cm程度の裂孔を認めていた.大動脈弁は生体弁に置換し僧帽弁は弁瘤を切除して縫合し逆流の制御に成功した.術後,急性呼吸窮迫症候群,循環不全,急性腎不全,心嚢液貯留を認めたため,エラスポール,ソルメドロール,カテコラミン,ピトレシン,持続的血液濾過透析,心嚢液穿刺で対応し状態落ち着いたため第86病日に当院を退院となった.
僧帽弁と大動脈弁,二弁の弁瘤を経食道心臓超音波検査で評価し得た極めて珍しい症例を経験した.本症例は2月に大動脈弁に感染が起こり,大動脈弁逆流で僧帽弁前尖に逆流ジェットが吹き付けることで僧帽弁まで感染が拡大,僧帽弁,大動脈弁の二弁に弁瘤が作られたと考えられた.