Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
バブル・音響放射力

(S494)

超音波照射下での微小気泡の凝集体形成時における微小固形物包含の実験的検討

Experimental study to include micro solids during forming microbubble aggregations under ultrasound emission

出町 文, 小井土 惇, 江田 廉, 望月 剛, 桝田 晃司

Fumi DEMACHI, Jun KOIDO, Ren KODA, Takashi MOCHIZUKI, Kohji MASUDA

東京農工大学大学院生物システム応用科学府

Graduate School of Bio-Application and System Engineering, Tokyo University of Agriculture and Technology

キーワード :

【目的】
近年,治療のために調製した細胞を患者に注入する細胞移植治療が活発に行われているが,血行性に移植された細胞は基本的に全身に拡散するため,標的部位への集積効率には限界があり,さらに移植細胞の正常部位への生着は副作用の危険がある.我々はこれまで,音響照射力を利用して人工血管中にて微小気泡の凝集体の形成法を検討してきた.そこで今回は凝集体形成の応用として,細胞を想定した微小固形物及び細胞を凝集体に包含する手法を検討し,将来的な血中での細胞の動態制御を目指した実験結果について報告する.
【方法】
本研究では微小気泡としてSonazoid,微小固形物としてメタクリル酸メチルクロスポリマーミネラルオイルのマイクロビーズ(粒子径平均20μm),さらにラット由来のリンパ球を用いた.ポリエチレングリコールモノメタクリレートを原料として作製した人工血管流路(内径2 mm)を脱気水で満たされた水槽中に沈め,水槽底部よりマイクロスコープにて観察する実験系を構築した.微小気泡と微小固形物の混合懸濁液を流し,これまでの実験により導出した凝集体形成のための超音波照射条件(中心周波数5 MHz,最大音圧300 kPa,流速20 mm/s)にて流れの向きに対向する方向から超音波を照射し,凝集体形成過程を観測した.ここで超音波の照射角度は60°とした.微小気泡の濃度と微小固形物の濃度をそれぞれ調整し,先行研究と同様に超音波の照射時間に対する凝集体の付着面積を評価した.注入する懸濁液は1試行あたり3 mlとした.
【結果】
微小気泡の濃度を0.08μm/mlとし,マイクロビーズの濃度を0.1-0.01 mg/mlの範囲に設定したところ,濃度に比例して付着面積は増大し,微小気泡のみの条件と比較すると有意に大きいことを確認した.またビーズをリンパ球に置き換え,その濃度を5.8×105/mlとし,超音波の照射開始より50 s後の観測領域を比較した写真を示す.この後音波照射を止めると凝集体は下流に流されていくことも確認した.さらに,浮遊した凝集体を底面と側面の2方向から観測し,その体積を画像処理から推定する実験も行った.これらの実験より,凝集体形成過程において微小固形物が包含されたと推定することができ,細胞制御の可能性が示唆された.
【参考文献】
出町ほか:生体医工学,Vol.51,No.6,2013