高木 亮

Ryo TAKAGI

東北大学医工学研究科

Department of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
低侵襲ながん治療法の一つとして強力集束超音波（HIFU : High-Intensity Focused Ultrasound）治療が注目を集めている．HIFU治療における通常の超音波モニタリングは，HIFU成分との干渉を避けるため，HIFU照射を一時的に止めて組織の変化を確認している．しかし，その方法ではHIFU照射中の組織の1msスケールの変化をモニタリングすることができない．そこで本研究ではHIFU照射中にイメージング用のインターバル時間を設けずに連続的に画像を取得し，真にリアルタイムな組織変化を検出する手法を検討した．
【方法】
通常のダイナミックフォーカスによりB-mode画像を生成した後ではHIFU成分などの特定の周波数成分を取り除くことはできない．そこで本研究では，B-mode画像生成前の生受信データを取得し，その信号を処理することにより，HIFU成分のみを除去する手法を検討した．HIFU照射中にHIFU成分の含まれるRF信号を連続的に取得し，それを全受信データから差引く処理を行う．すなわち，B-mode画像生成前の受信RFデータの水領域の信号をHIFU成分とみなし，それを組織領域の信号から差引いたデータを用いて画像を生成する．これにより，HIFU成分を除去して組織成分のみを抽出したB-mode画像を得て，この画像からブロックマッチングアルゴリズムを用いて画像同士の相関をとることで加熱凝固領域の推定を行った．使用した生体模擬試料は豚肝臓である．
【結果・考察】
Fig. 1にHIFU成分除去前後のB-mode画像を比較した結果を示す．HIFU成分除去処理の結果，組織成分のみを残し，ほぼ完全にHIFU成分を除去することができた．Fig. 2にHIFU成分除去前後のB-mode画像を使って作成した加熱凝固領域推定のための相関図の結果を示す．HIFU除去後の画像を使って作成した相関図を見ると，HIFU焦点領域に相関値の低下領域が確認できる．本手法により加熱凝固領域の推定がある程度，可能であることが示唆された．相関値の低下領域と実際の凝固領域サイズを比較すると伝搬方向・方位方向共に差異があった．今後は，正確な凝固領域サイズ推定のための検討が必要である．
【結論】
本手法により，HIFU治療中にリアルタイムに組織成分のみの信号を抽出し，加熱凝固領域推定を行えることが可能であることが示唆された．