中村 弘文¹, 東 隆¹, 玉野 聡², 葭仲 潔³, 佐々木 明¹, 竹内 秀樹¹, 高木 周¹, 松本 洋一郎¹, 梅村 晋一郎²

Hirofumi NAKAMURA¹, Takashi AZUMA¹, Satoshi TAMANO², Kiyoshi YOSHINAKA³, Akira SASAKI¹, Hideki TAKEUCHI¹, Shu TAKAGI¹, Yoichiro MATSUMOTO¹, Shin-ichiro UMEMURA²

¹東京大学工学部, ²東北大学医工学研究科, ³産総研ヒューマンテクノロジー研究部門

¹School of Engineering, The University of Tokyo, ²Bioengineering Dept., Tohoku University, ³Human Technology Research Institute, AIST

キーワード :

【目的】
本研究は，乳房を対象とするリング型アレイトランスデューサを用いた超音波診断治療統合システムの開発を目的としている．リング型振動子による超音波断層像を用いた診断と，HIFUを用いた低侵襲ながん治療を組み合わせることで，HIFUビームの音速補正の可能性や，多方向照射による治療部位に対する効果選択性の向上などが期待できる，理想的な乳がん治療スキームが実現できると期待される．今回，リング型アレイを用いた超音波CT（Computed Tomography）撮像に関する検討結果を報告する．
【方法】
音速再構成アルゴリズムのシミュレーション検討を行い，次に試作機を構築しウレタンゲルに対する撮像実験を行った．超音波CTでは，生体組織のもつ不均一性の影響を受け反射，屈折が生じるため複雑な再構成アルゴリズムが必要である．リング直径100 mm，送信周波数1 MHz，素子数256chとしてシミュレーション検討を行った．投影データからの再構成にはSART（Simultaneous Algebraic Reconstruction Technique）法を用い，局所の屈折率勾配から経路の屈折を逐次計算するアルゴリズムを組込んだ．1540 m/sの周辺領域に対して音速1430m/sの円形脂肪領域を設定し，再構成画像におけるサイズ推定誤差を評価した．シミュレーションにおける投影データの取得には時間領域の有限要素法であるPZFlexを用いて計算を行った．また実験には図1aに示す1024ch，直径100mm，中心周波数2MHzのアレイの試作を行い，試作マルチプレクサを介して，256chのプログラマブルビームフォーマであるVerasonicsに接続，水中に沈めた直径40mmのウレタンゲル（音速1470m/s）を撮像対象とした．短軸のフォーカスにはシリコーンゴム製の音響レンズを用いた．
【結果・考察】
音の伝搬経路に屈折を考慮しない場合と考慮した場合，それぞれサイズ誤差は23％と6％であり，乳房と同程度の小さな音速不均一においても，屈折の考慮が精度向上に重要であることが示された．また図1bに示す実験結果から，材質の音速にほぼ一致する再構成像が得られることを確認した．