Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
治療応用

(S489)

超音波照射実験用音響窓付き脳腫瘍細胞培養フラスコの作製と評価に関する検討

Fabrication and estimation of brain tumor cell culture flask with acoustic windows for culture and ultrasound irradiation

岩城 咲乃1, 渡邉 晶子1, 2, 小野塚 善文3, 薬袋 正恒1, 西村 裕之1, 竹内 真一1

Sakino IWASHIRO1, Akiko WATANABE1, 2, Yoshifumi ONOZUKA3, Masatsune MINAI1, Hiroyuki NISHIMURA1, Shinichi TAKEUCHI1

1桐蔭横浜大学大学院医用工学専攻, 2福岡大学医学部, 3精電舎電子工業株式会社技術部

1Graduate school of Biomedical Engineering, Toin University of Yokohama, 2Medical department, Fukuoka University, 3Technology & engineering division, Seidensha Electronics Co., LTD.

キーワード :

【はじめに】
近年,脳腫瘍治療に経頭蓋HIFU治療装置が用いられている.しかし加熱凝固,壊死させるためにネクローシスが発生し,周囲にある正常な脳組織に悪影響を与えてしまう可能性が考えられる.そこで,本研究では超音波照射による脳腫瘍細胞のアポトーシス誘導を治療に利用しようと検討を行っている.超音波照射の対象としている脳腫瘍細胞を入れる容器に市販の細胞培養フラスコ(超音波入射面の厚さ約2 mm)を使用すると,フラスコの表面で超音波エネルギーが反射し,細胞まで届かないという問題があった.更にフラスコの底面が超音波ビーム内に収まるようにする必要がある.そこで独自に,超音波照射用のフィルム状音響窓付き付着細胞培養フラスコを作製する必要性が出てきた.
【培養フラスコの作製】
音響窓用のフィルムの候補として,細胞接着試験と毒性試験によって良好な結果を得ることのできたPETフィルム(東レ株式会社,ルミラー,厚さ25μm)とPSフィルム(旭化成ケミカルズ株式会社,OPS,厚さ25μm)を選択した.毒性試験によりフィルムとフラスコ本体との接合には溶剤を使用しないことが望ましいということが分かった.そこで,熱溶着および超音波溶接を使用して接合方法の検討を行った.その結果,PSフィルムをアクリル樹脂(PMMA)パイプ本体の一方の端面に熱で溶着させることは可能であったが,PETフィルムをPMMAパイプの端面に熱溶着することは困難であった.超音波溶接ではPETフィルムとPMMAパイプの接合が可能になり強力超音波音場の中でもフラスコが破損することはなかった.
【耐久性実験】
作製した超音波照射用音響窓付き培養容器に対して当研究室製の超音波照射システムを用いて超音波照射時と同じ条件で耐久性実験を行った.熱溶着で作製したフラスコでは空間ピーク強度が高いと破損しやすく,耐久性に問題があることが考えられた.超音波溶接で作製したフラスコでは熱溶着での限界値である空間ピーク強度233 mW/cm2での照射実験でも作製したフラスコは破損することはなかった.
【まとめ】
超音波溶接では細胞接着率が一番良好であったPSフィルムでの接合が可能になり強力超音波音場中でもフラスコが破損することはなかった.熱溶着ではホットプレートの温度変化が容器の耐久性を低減させている可能性があるため,温度変化が少なく温度の分布を一定にする.今後は熱溶着,超音波溶接共に耐久性を増加させていく予定である.