Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
血流計測

(S485)

ドプラ糸ファントムによる位相変位に関する基礎的検討

Phase shift of received signal from the moving string target

近藤 祐司1, 村山 真実2, 長谷川 智仁3

Yuji KONDO1, Makoto MURAYAMA2, Tomohito HASEGAWA3

1東北大学大学院工学研究科, 2東杜シーテック株式会社テクニカルセクション.3, 3マイクロソニック株式会社技術開発部

1Electronic Engineering, Tohoku University, 2Technical section.3, Tohto C-tech Corporation, 3Reserch and Development, Microsonic Co.,jp

キーワード :

【はじめに】
筆者らはドプラ性能評価のために速度定量性と空間分解能を同時に評価できるドプラ糸ファントムを開発した.1) 糸からの反射信号は固定位置に出現するにも関わらず,糸を動かすことによってその速度に対応したドプラ信号が得られることは経験的に知られている.しかしながら受信RF信号を逐次観察し,その位相変化が糸の動きに起因するものであることを確かめる検討はされていない.そこで筆者らは糸ファントムを用いて受信RF信号を素子レベルで取得し,位相変位の発生状況を確認した.
【方法】
糸ファントムは最大10本の糸を深さ方向に1mmの間隔で配置することができる.また,各糸の速度はおよそ4%から15%の違いを持たせることができる.更に糸の張り方を逆向きにすることで逆流を想定した反対方向の動きをさせることができる.糸はFig.1に示すように1mm,2mm,3mm,1mm,1mmの間隔に6本張り,下から2番目の糸は逆向き動作とした.最上位の糸から更に約3mm上部に目印のための剛球反射体を配置し,0.3mmピッチのリニアプローブを糸と60°の角度に設置して測定した.正方向の糸の速度は46〜68mm/sであり,送受信は同一方向に1kHzの繰り返しで行った.各振動子からの受信RF信号はPCIeを経由してPCに取得して信号の位相解析を行った.
【結果】
Fig.2は16素子で送受信を行ったときの逆流を含む部位からの4回分の反射信号波形を示す.送信は約20mmの深さにフォーカスし,受信は深度に応じて連続的にフォーカスした.順方向と逆方向の位相変化が観測される.Fig.3は連続する24回分の受信信号における逐次位相差の平均値を示す.破線は糸の位置と速度に応じた位相差を示す.検出された位相差は逆流部位を含めて糸速度およびその位置を良く反映している.深さ方向への分解能は送受信フォーカスを行うことで良好となるが,単一受信信号では1mm間隔の糸の分離は困難であった.速度定量性は処理条件にはあまり影響されないが,糸の分離能力に関しては適切な雑音除去が必要であることが判明した.
1)長谷川智仁 J.Med/Ultrasonics,40,Suppl,基P006,2013