Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
画像解析

(S478)

非スペックル成分除去による肝エコー信号のモデル化精度の高度化

Improvement of modeling accuracy of the multi-Rayleigh model for the liver fibrosis by removing non-speckle signal

樋口 達矢1, 平田 慎之介1, 山口 匡2, 金山 侑子3, 矢野 雅彦3, 蜂屋 弘之1

Tatsuya HIGUCHI1, Shinnosuke HIRATA1, Tadashi YAMAGUCHI2, Yuko KANAYAMA3, Masahiko YANO3, Hiroyuki HACHIYA1

1東京工業大学大学院理工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

1Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Ultrasound Systems Development Department, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【目的】
正常肝のように均質な媒質からのエコー信号の振幅分布はレイリー分布で近似できるが,びまん性肝疾患ではその進行と共に組織が不均質な構造へ変化するため振幅分布はレイリー分布から逸脱する.[1]我々は病変肝の物理的な構造と一対一に対応した振幅分布モデル(マルチレイリーモデル)を提案しており,このモデルを用いた肝炎線維化定量評価手法を検討している.[2]
これまでの臨床データに対する解析の結果,エコー画像上でスペックルを示さない平滑な構造を含むROIでは,マルチレイリーモデルのモデル化精度が悪くなることが分かっている.そこで本研究では,二つの確率分布の差異を表す指標であるKL情報量に基づいてモデルでは表現できない構造からのエコー信号成分を抽出し,それらを除外することによってモデル化精度を改善する手法について検討した.
【方法】
臨床データに対してマルチレイリーモデルを適用し,モデルとデータの振幅分布の差異をKL情報量によって評価する.ROI中にモデルが仮定していない平滑な構造からのエコー信号が含まれる場合,データの振幅分布がモデルから逸脱し,KL情報量は増加する.特に高エコーな平滑構造がROI中に含まれる場合,データの振幅分布の高振幅側の裾付近に不連続点が表れ,モデルの近似精度を悪化させる.そこで,KL情報量が一定値以下になるまで高振幅側から順番にデータを抽出することによって,高エコーな平滑構造を検出する.平滑な構造からの信号を除外する前後のKL情報量の値を比較し,モデル化精度が改善されることを示す.
【結果】
解析に使用した臨床データのB-mode画像と,提案手法によって平滑な構造を抽出した結果をFig. 1に示す.抽出された画素を白で,それ以外を黒で表示している.血管周辺などに現れている干渉のない孤立反射信号からなる平滑構造を抽出できていることが分かる.これらの構造を除外し,KL情報量の値を算出した結果,データが除外されたROIにおけるKL情報量の値が小さくなり,モデル化精度が改善されることが分かった.この結果から,提案手法によりモデルが仮定していない平滑な構造を抽出でき,さらに,それらを除外することでモデル化精度を向上できることが示された.
【参考文献】
[1]T. Yamaguchi, H. Hachiya, Jpn. J. Med. Ultrasonics, 37(4)155(2010).
[2]樋口達矢,平田慎之介,山口匡,蜂屋弘之,日超医第86回学術集会,Vol. 40,Supplement, S407,Apr. 2013.