Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
画像解析

(S476)

局所的統計量に基づく特徴量と複数小領域による画像類似度を用いたUS画像位置合わせ

Ultrasound image registration with statistical characteristic volume derived from the 3D local statistical information

木原 朝彦

Tomohiko KIHARA

岡山理科大学工学部生体医工学科

Biomedical Engineering, Okayama University of Science

キーワード :

【目的】
病変の経時変化や治療効果を判定し,効果的な治療方針を決定・実施するために,診断・治療・評価の各段階で得られる一連の画像を空間的に位置合わせする意義は大きい.画像位置合わせの手法は,CT,MR,PETの分野を中心に精力的な研究が行われ,多くの問題を解決したが,循環器や腹部の画像診断に最適なモダリティであり,臨床で広く利用されているにもかかわらず,超音波画像を対象とした研究は他のモダリティに比べその数は少なく,性能の良い位置合わせ技術の開発が待たれている.
報告者らは,多数の小領域でのボリューム類似度を統合して全体の類似度として超音波画像の位置合わせを行う方法の有効性を報告してきたが,今回は,これに加え,局所的な統計量に基づく特徴量画像を利用することによる位置合わせ性能の向上について検討した.
【対象と方法】
造影検査を含む術前,術中,術後の3D肝臓超音波検査臨床例から16症例82組のボリュームデータを選定した.ペアごとに,基準として固定する画像と回転と平行移動を施す画像を互いに入れ替えた82×2=164通りを実験対象とした.データは8ビットの2563立方体ボクセルデータで,ボクセルの1辺の長さは0.25mm〜0.55mmである.使用した装置は,東芝メディカルシステムズ社製AplioXG,腹部用の5MHZの4Dプローブである.
3次元局所統計量に基づく特徴量として,注目する点を中心とした半径rのマスク領域内の輝度値の標準偏差とエントロピーを評価した.また,局所的な輝度値分布の違いを効果的に反映する目的で,半径rのマスク領域に内接する正二十面体で分割される20個の領域ごとに,輝度値の確率分布q_j(i):j=1〜20を計算し,この分布とマスク領域全体の輝度値の確率分布p(i)のKullback-Leibler情報量の総和によって求めた特徴量についても評価した(KL20と呼ぶ).今回の評価ではマスク領域の半径はr=5ボクセルサイズを用いた.
画像中央に483サイズの小領域VOIを3×3×2=18個配置し,VOIごとに計算した画像類似度の総和を全体の画像類似度とし,これをdownhill simplex法により最適化して位置合わせした.画像類似度には相互情報量(MI値)と相関係数の2種類を用いた.
位置合わせ性能の評価は,予め主観的に作成した「正解」位置に対する位置合わせ後の残差で評価した.正解値と位置合わせ結果の残差は,「正解」の対象画像のボリューム中心(原点)に1辺が100mmの立方体を想定し,位置合わせ結果上の同様の立方体の8頂点との距離の平均値として算出した.
【結果と結論】
164通りの実験対象に対して,上述した評価を行った結果,正解値と位置合わせ結果の残差が10mm以下となった割合は,輝度値の場合,画像類似度がMI値および相関係数のいずれの場合も63.4%,標準偏差ではMI値で82.9%,相関係数で88.4%,エントロピーではMI値で82.3%,相関係数で87.24%,KL20ではMI値で87.2%,相関係数で92.1%となった.これらの結果から,輝度値に変えて,局所的な統計量,特にKL20を用いることにより,超音波画像の位置合わせ性能を向上することができることが示唆された.