Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織弾性・変位計測

(S475)

平均垂直応力分布の無視による組織弾性再構成への影響理論的予測とシミュレーション

Effects on tissue elasticity reconstruction due to ignoring mean normal stress distribution Theory and simulations

炭 親良, 平林 勇人

Chikayoshi SUMI, Yuto HIRABAYASHI

上智大学大学院理工学研究科情報領域

Graduate school of Science and Technology, Information Science, Sophia University

キーワード :

【目的・対象】
我々は,組織変位計測に基づいて組織(粘)ずり弾性率分布を再構成することを提案した.非圧縮性を呈示する組織は,ポアソン比を限りなく0.5に近く設定して扱えるが,不安定になることが多い.そこで,我々は,ずり弾性率分布に加えて平均垂直応力分布を同時に再構成することを提案し,非圧縮性である場合のみならず,圧縮性組織をも扱える様にした.その場合は,ポアソン比も安定的に再構成できる.これに対し,平均垂直応力分布を無視し,ずり弾性率分布のみを再構成することもある.この様な再構成において,ずり弾性率分布を局所に均質と仮定すると,ずり波の伝搬速度からずり弾性率を求めることになる.最近,我々は,平均垂直応力分布を無視することがずり弾性率分布再構成に与える影響について調べている.
【方法・結果】
ずり弾性率の異なる領域を持つシミュレーションファントムにおいて,そのずり弾性率が周囲に比べて高いときと低いときとの各々において,ずり弾性率は真値に比べて高く,そして,低く再構成された.支配的に変形している方向の運動方程式から,ずり弾性率のその方向の偏微分をずり弾性率で割った式を導出すると,加速度の符号に寄らず,平均垂直応力分布を無視することによる影響を予測できた(両辺をずり弾性率の参照位置からその方向に積分するとずり弾性率の参照値に対する相対値の自然対数を得る).ポアソン比が不均質である場合についても調べた.例えば,ポアソン比が周囲に比べて低い場合は,予想通り,高いずり弾性率は真値よりも低く再構成された(例えば,周囲に比べてつめもののずり弾性率が2倍,ポアソン比が0.47に対して0.43以下である場合は,ずり弾性率は周囲のそれに比べて逆に低く再構成された.Figを参照.).逆に,ポアソン比が高い場合,ずり弾性率は,真値よりも高く再構成されると予想されるが,つめものの前後にて強く応力が集中するため,真値よりも低く再構成された.参照領域を応力集中の位置に設定し,予想通りの結果を得た.
【考察・結論】
運動方程式を用いて,平均垂直応力分布を無視した場合の影響を予測できることを確認した.その他,弾性特性の非線形性(ずり弾性率は低めに)や非等方性(非等方性弾性率の高い弾性率を無視すると高めに)を無視した場合や,弾性率の局所の均質性を仮定した場合(ずり弾性率は低めに)が再構成に与える影響についても言及する.