Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織弾性・変位計測

(S473)

VTQ法とVTIQ法による剪断弾性波伝搬速度の比較:ファントムを用いた検討

Comparison of Shear wave velocity measurement with VTQ and VTIQ methods: phantom study

岸本 理和1, 小山 敦久2, 小畠 隆行1, 尾松 徳彦1, 菅 幹生2, 辻 比呂志1, 鎌田 正1

Riwa KISHIMOTO1, Atsuhisa KOYAMA2, Takayuki OBATA1, Tokuhiko OMATSU1, Mikio SUGA2, Hiroshi TSUJI1, Tadashi KAMADA1

1放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院, 2千葉大学大学院工学研究科

1Center Hospital, National Institute of Radiological Sciences, 2Graduate School of Engineering, Chiba Univetsity

キーワード :

【目的】
ARFI(acoustic radiation force impulse)法を利用した組織の硬度測定は,用手的な圧迫を必要とせずに定量的な測定が可能で,臨床的にもその有用性が報告されている.従来のVTQ(virtual touch quantification)法では一か所のROIのみの剪断弾性波伝搬速度(SWV: shear wave velocity)の測定であったのに対し,新しいVTIQ(virtual touch IQ)法では広い範囲の分布画像が得られた後で,任意の箇所のSWVを測定することが可能となった.この方法によりこれまでVTQ法では測定困難であった病変の硬さが測定できるようになった一方で,これまでのVTQ法と値が若干異なることが臨床的に経験される.今回我々はファントムを用いて,VTQ法とVTIQ法でSWV値に違いがあるかどうか確認した.
【方法】
超音波散乱体としてグラファイトを含むアクリルアミドゲルを用いて作成した硬度が異なる5種類の均一ファントム及び周囲より硬い円柱状の埋め込み(4種類のサイズ)を含む一つのファントムを対象とした.装置はシーメンス社製acuson S3000,9MHzプローベを用いた.プローベによるファントム圧迫の強さが一定となるようにプローベとファントムを機械固定し,均一ファントムの場合は深さ3cm,埋め込みファントムの場合は深さ2.2cmの同一箇所でVTQ・VTIQ法を用いて5回ずつSWVを測定した.t検定を用いて統計学的に比較し,p<0.05の場合有意とした.
【結果】
均一ファントムではすべての硬度においてVTIQはVTQより有意に低値となり,その違いは4.4-19.0%であった.埋め込みファントムの場合は埋め込み部分のサイズが10〜23mmの小さいものでVTQはVTIQより有意に低値となり,その違いは4.1-55.3%であった.埋め込みサイズが小さいほどその差は大きくなる傾向にあった(図).
【考察】
様々な臓器や疾患におけるSWV値の報告が増加している中で,測定方法によるSWVの違いの有無の確認は重要である.均一ファントムよりも埋め込みファントムでSWVの違いが大きくなったということは,境界面での屈折や散乱の影響が考えられる.
【結語】
VTQ法とVTIQ法ではSWVに乖離が見られる可能性が示唆された.臨床的に両者を使う場合は注意が必要と思われた.