Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織弾性・変位計測

(S473)

せん断波発生位置と伝播距離がせん断波画像に及ぼす影響

Push pulse position and distance of shear wave propagation affect shear velocity imaging

金山 侑子, 渡辺 正毅, 掛江 明弘

Yuko KANAYAMA, Masaki WATANABE, Akihiro KAKEE

東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
push pulseの与える音響放射力により組織を局所的に変位させてせん断速度を測定するせん断波イメージングでは,数μmの変位を解析することが必要であり,微小な擾乱により結果が左右されやすい.本報告では,push pulse照射位置がせん断速度推定に与える影響を調査し,より信頼性のある安定したせん断速度画像を提供する手法を提案する.
【手法】
試作装置はTUS-500A,探触子はPVT-375BTを使用した.ROIを一定幅の小ブロックに分割し,各ブロックの左右の端部においてpush pulseを照射してせん断波を発生させ,その伝播をブロック内の走査線において観測し,変位の時間変化を算出した.全体的な動きを除去し,特定の方向に伝播する成分のみを抽出[1]した後,変位時間曲線の相互相関からせん断波到達時間を求め,その傾きから各点のせん断速度を算出した.ここで,push pulseを各ブロックの左右それぞれで照射してそのせん断速度を求めた結果と,それらを重畳した結果を比較し,push pulseを照射するブロック幅は,プローブ表面において3.2mmおよび6.5mmの二種類を試した.対象はエラストQAファントム(Model 049,CIRS, typeIV;80kPa).
【結果】
図1を見ると,いずれのブロック幅の場合も,左右に伝播するせん断波の結果を重畳すると,片側方向にのみ伝播するせん断波を観測したときよりも画質が向上することが分かる.各点の時間変位曲線を調べると,せん断速度の誤差が大きい部分では発生位置から直接伝播したせん断波と境界面で反射したせん断波が干渉しあい,到達時間が精度良く求められていないことが分かった.特にブロック幅が大きい場合,せん断波の伝播距離が大きいため反射波と干渉しやすい.ブロック幅を狭めても,境界面とせん断波発生点の位置関係によっては干渉の影響を避けられず,左右両側でせん断波を発生させることで反射干渉の影響を低減できた.
【まとめ】
せん断波の反射はせん断速度の精度に影響を与える.硬い対象物で狭い範囲に境界面が多い場合は特に注意が必要である.複数の位置で発生させたせん断波を,伝播距離が短い領域で観測することにより,精度を向上させることができる.
【参考文献】
[1]Deffieux et al. IEEE UFFC 58(10);2032(2011)