Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織弾性・変位計測

(S472)

せん断波を利用した組織弾性計測に関する心拍動の影響評価

Effect of Heart Beat on Accurate Shear Wave Elastography

吉川 秀樹1, 園山 輝幸2, 井上 敬章2

Hideki YOSHIKAWA1, Teruyuki SONOYAMA2, Noriaki INOUE2

1日立製作所中央研究所, 2日立アロカメディカル第一技術開発部

1Central Research Laboratory, Hitachi, Ltd., 2Engineering R&D Department 1, Hitachi Aloka Medical, Ltd.

キーワード :

【背景】
音響放射圧を利用して生体内にせん断波を発生させ,その速度から組織弾性を評価する技術が,癌や肝臓線維化を対象に普及しつつある.組織性状を定量的に評価できる特長がある一方,本計測技術は,心拍動や消化管の蠕動の影響を強く受ける.特に左葉計測は,右葉に比べて誤差が拡大することが示唆されており,適用範囲が限定的である[1].敢えて左葉を計測対象とする臨床価値は現時点で明確になっていないが,肝硬変の特徴所見として,左葉腫大と右葉萎縮といった違いがあることから,びまん性疾患の中長期的な経過観察には,肝臓全体の計測が重要だと考える.
【目的】
本報告では,心拍動の影響を受ける左葉に適用可能な弾性評価技術の確立に向けて,外部圧迫が弾性計測へ与える影響を検討する.特に圧迫方向に対する伝搬速度の方向依存性に着目し,波面を立体的に捉えうる実験系で波面解析を実施する.
【実験】
実験系を図1に示す.生体組織を模擬したファントムを挟む形で放射圧発生用のトランスデューサと波面計測用の探触子を配置した.ファントム上部を均一に圧迫できる仕組みを備え,歪(strain)を0%から29%まで変更し,せん断波の速度計測を行なった.放射圧発生用の送信条件は,周波数3.3MHz,時間0.5msで,円形集束トランスデューサ(直径30mm,Fナンバ2)を利用した.せん断波の伝搬に伴う媒質の変位は,超音波診断装置(日立アロカメディカル製EUB-8500)とリニア探触子(EUP-L73S)でRFデータを取得し,複素相関演算により算出した.上記送信とデータ取得を方位方向に繰返し,波面形状を示す振幅画像を作成した.
【結果】
圧迫状態(strain=29%)における速度計測結果を図2に示す.圧迫軸に沿う平行方向に伝搬する波面速度が1.7m/sに対し,垂直方向に伝搬する波面速度は3.1m/sとなり,約2倍の速度差が発生した.また,非圧迫状態では波面速度は2.4m/sで方向依存性がないことから,平行方向では減速,垂直方向では加速することが判った.
【結論】
外部圧迫を受ける粘弾性体では,せん断波伝搬速度に方向依存性が発生することを実験的に確認した.理論的には,粘弾性の非線形性が影響していると考えられ,今後,本実験結果との比較検証を進める.また病態毎の影響の違いに関しても検討を行なう.
[1]Toshima T et al.: J. Gastroenterol., 46(2011)705.