Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織音響特性

(S469)

低強度超音波による放射線誘発細胞死の増強効果とその機構の解明

Effects of low intensity pulsed ultrasound on cell killing induced by X-irradiation

近藤 隆

Takashi KONDO

富山大学大学院医学薬学研究部

Graduate School of Medicine and Pharmaceutical Sciences, Univerisity of Toyama

キーワード :

【目的】
超音波は診断のみでなく,機械的作用や熱的作用を利用してがん治療にも用いられている.超音波単独による治療法としては,温熱(ハイパーサーミア)治療および集束超音波によるHIFU治療で超音波を集中させることによる高温を利用し前立腺がんや乳がんの治療に用いられている.超音波と薬剤併用療法は多くの研究成果が発表されており,遺伝子製剤や微小気泡製剤等の利用を含めて,今後の発展と臨床利用が期待されている.放射線は単独で,癌治療における重要な位置をしめているが,温熱との併用等は研究されてきたものの,超音波との併用例は少ない.そこで,本研究では放射線照射後に,低強度の超音波を照射し,放射線による細胞死に与える影響について検討した.
【方法】
細胞として,ヒト白血病細胞株であるU937およびMolt-4細胞を使用した.X線照射直後に1 MHz,PRF 1〜5Hz,DF 50%,強度0.3 W/cm2の非イナーシャルキャビテーション条件で超音波照射した.細胞死については,トリパン青色素排除能を指標に全細胞死を測定し,アポトーシスをアネキシンV-FITCおよびPIの2重染色後に,フローサイトメトリーで測定した.また,細胞周期,細胞内活性酸素,およびDNA損傷等指標についても調べた.
【結果と考察】
U937細胞ではp53が変異をしており,放射線誘発細胞死にも抵抗性を示した.一方,超音波を併用することで,細胞死に関して,増強効果が認められた.アポトーシスについては,放射線によるその誘発率は低く,超音波併用による放射線誘発アポトーシスの増強効果はなかった.Molt-4細胞は野生型p53を有し,高い放射線感受性を示した.超音波併用時,有意な細胞死増強作用を認めたが,アポトーシスについては,増強効果はなかった.放射線細胞死の超音波照射による増強効果は細胞膜の損傷が関係するネクローシスの増加によることを示唆する.この増強機構について,細胞周期,細胞内活性酸素,DNAおよび細胞膜損傷の観点から考察する.
【結論】
低強度のパルス超音波を照射により,放射線誘発細胞死の増強の可能性を示した.
【謝辞】
本研究はMikahil A. Buldakov博士(Tomsk Cancer Institure, Russia)およびMariame A. Hassan博士(Cairo University, Egypt)との共同研究であり,ここに感謝します.
【文献】
M.A. Buldakov, L.B. Feril Jr, K. Tachibana, N.V. Cherdyntseva, and T. Kondo: Low-intensity pulsed ultrasound enhances cell killing induced by X-irradiation. Ultrason Sonochem(in press)