Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 基礎
組織音響特性

(S468)

超音波とMRIを用いたマルチモダリティ法による再生軟骨の非侵襲音速測定

Noninvasive Measurement of Speed of Sound in Regenerating Cartilage Using Multimodality Technique Using Ultrasound and MRI

新田 尚隆1, 兵藤 行志1, 三澤 雅樹1, 森田 俊之2, 沼野 智一3, 本間 一弘1, 藤原 夕子4, 星 和人4, 高戸 毅4

Naotaka NITTA1, Koji HYODO1, Masaki MISAWA1, Toshiyuki MORITA2, Tomokazu NUMANO3, Kazuhiro HOMMA1, Yuko FUJIHARA4, Kazuto HOSHI4, Tsuyoshi TAKATO4

1独立行政法人産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 2駒澤大学大学院医療健康科学研究科, 3首都大学東京人間健康科学研究科放射線科学域, 4東京大学医学部附属病院ティッシュ・エンジニアリング部

1Human Technology Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology(AIST), 2Graduate Division of Health Sciences, Komazawa University, 3Department of Radiological Science, Tokyo Metropolitan University, 4Department of Tissue Engineering, University of Tokyo Hospital

キーワード :

【目的】
再生医療における再生軟骨の力学特性あるいは弾性特性は,構造的強度を評価する上で重要な特性である.しかしながらこれを生体内において非侵襲で評価する手法は確立されていない.そのため,再生軟骨弾性の生体内評価が可能となれば,将来的な再生軟骨の実用化促進への寄与が期待される.生体内の弾性評価法としてはエラストグラフィがあるが,評価対象の大きさや内部エコーの弱さからその適用が困難となることが予想される.一方,音速は組織弾性を反映することが知られており,我々は以前,音速の非侵襲計測法として,MRIによる幾何学計測と超音波の伝搬時間計測を組み合わせたマルチモダリティ法を提案した.そこで本研究では,マルチモダリティ音速測定法を再生軟骨に適用し,有用性を検討したので報告する.
【方法】
本研究における全ての処置は東大病院及び産総研倫理委員会の承認を受けて実施された.10週齢ラット(オス)の背部皮下にヒト軟骨細胞を播種したPLLA足場材(50 x 6 x 3 mm)を移植して再生軟骨を作製し,2週及び8週後に解析を行うプロトコルで実験を行った.この際,ネガコン群を作製するために,一定割合で線維芽細胞を混入させた再生軟骨も作製し併せて解析した.まずラットの麻酔導入時において,ケタラール72.8mg/kgとセラクタール10.9mg/kgの混合液,及びアトロピン0.15mg/kgの腹腔内投与を行い,苦痛・苦悩を軽減した状態で固定し,続くMRIと超音波による撮像及び計測はイソフルラン1-5%による吸入麻酔下で行われた.MRIは動物実験用2T MRIを使用し,各再生軟骨の厚さ(MR-thickness)を測定した.また,各再生軟骨内における超音波の伝搬時間は,Bモード画像において変位計測に基づく境界検出を行い計測された厚さ(Bm-thickness)から算出した.Bモード画像で測定される厚さは生体内換算距離であることを考慮し,真の音速値を次の定式によって算出した:
1530(m/s)×MR-thickness(mm)/Bm-thickness(mm).
算出された音速値の精度検証は,計測実験終了後に再生軟骨を摘出し,別途パルス反射法により測定された音速値との比較により行われた.またマルチモダリティ法により計測された音速と弾性特性との相関を調査するために,摘出した再生軟骨の圧縮試験を実施し,両者を比較した.
【結果】
マルチモダリティ法による音速値と,パルス反射法による音速値は良好な相関を示した(R2=0.94).またマルチモダリティ法による音速値と,圧縮試験で算出された平衡弾性率(ヤング率)との相関も良好であった(R2=0.86).
【結論】
超音波とMRIを用いたマルチモダリティ法による生体内再生軟骨の音速測定は,再生軟骨の非侵襲的弾性評価法として有用であることが示唆された.
【文献】
1)N. Nitta et al., Proc EMBC 2013,pp.6063-6066,2013.
2)T. Aoki, N. Nitta et al., RPT 6(2), pp.480-485,2013.
3)青木,新田他,日超医抄録集,pp.353,2012.