Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
消化器 奨励賞

(S456)

Superb Microflow Imaging(SMI, work in progress)を用いた慢性肝疾患の評価の試み

Assessment of chronic liver damage with Superb Microflow Imaging

小山 展子1, 畠 二郎2, 佐藤 武史3, 河合 良介2, 眞部 紀明2, 今村 祐志2, 高田 珠子4, 春間 賢5, 日野 啓輔1

Nobuko KOYAMA1, Jiro HATA2, Takeshi SATOU3, Ryousuke KAWAI2, Noriaki MANABE2, Hiroshi IMAMURA2, Tamako TAKATA4, Ken HARUMA5, Keisuke HINO1

1川崎医科大学肝胆膵内科学, 2川崎医科大学検査診断学, 3東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部, 4三菱三原病院消化器内科, 5川崎医科大学消化管内科学

1Department of hepatology and pancreatology, Kawasaki Medical School, 2Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Department of Ultrasound Systems Development Department, Toshiba Medical Systems Corporation, 4Department of Gastroenterology, Mitsubishi Mihara Hospital, 5Department of Gastroenterology, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景】
慢性肝疾患における肝線維化診断のゴールドスタンダードは肝生検とされているが,侵襲的検査であり,サンプリングエラーの問題もある.近年,肝線維化の非侵襲的診断法として,超音波ではFibroscanTMなどの組織弾性を応用した手法が注目されているが,いずれの手法にも問題点は指摘されており,現時点で理想的な診断法は存在しない.一方最近開発されたSuperb Microflow Imaging(SMI, work in progress)は,高感度・高分解能・高フレームレートな血流表示法であり,非造影下ではこれまで検出困難であった微小血管の描出に優れている.
【目的】
SMIを用いて肝の微細血管を描出し,慢性肝疾患の評価における有用性を検討する.
【対象・方法】
2012年11月から2013年12月までの間にSMIで肝表面血流評価が可能であった慢性肝疾患のうち,組織学的診断が得られた8例(C型5例,B型2例,NBNC型1例)と各種画像診断・血液検査により肝硬変と診断された7例(C型4例,B型1例,NBNC型2例),健常例11例の計26例を対象とした.慢性肝疾患の線維化ステージ分類は,それぞれF0:0,F1:2例,F2:1例,F3:5例であった.SMIにより肝表面から1.5cmの範囲の血管を描出し,それらの形態と走行を検討した.次に肝表面から約5mmの深さに存在する門脈の分岐角度を異なる5か所で測定し,その平均値を算出した.これにより得られた結果を慢性肝疾患群と正常群で比較検討した.使用機種は東芝社製アプリオ500,プローブは7MHzまたは12MHzリニアを用いた.
【結果】
1)血管の形態・走行の比較
正常群における肝表面の微細血管は鋭角的な分岐で分岐後の末梢枝が直線的に肝表面に向かって走行しているのに対し,肝硬変例では分岐部位が円弧状を呈し(U字状),分岐後の末梢枝は互いに近づいて並走し,蛇行して走行する傾向が見られた.U字状の分岐が見られたのは,肝硬変7例中5例(C型肝硬変4例,B型肝硬変1例,Child A 3例,Child B 2例),慢性肝炎F3症例5例中2例(B型慢性肝炎1例,NBNC型1例)であった.
2)分岐角度の比較
肝硬変7例中5例と慢性肝炎F3症例5例中2例は,分岐部位がU字型を示し,分岐角度の測定が困難であった.測定が可能であった慢性肝炎(F1〜F3)6例と健常例11例の分岐角度を比較したところ,慢性肝炎群:83±24度,正常群:63±19度(P<0.05)と慢性肝炎群で有意に分岐角度が鈍角であった.
【考察】
微細循環の評価法として造影超音波が確立されているが,造影剤の静注を必要とすることや,造影効果の継時的減衰,肝臓ではクッパー細胞への取り込みにより微小血管が不明瞭となるといった問題点が存在する.それに対しSMIは非造影下での微小血管の恒常的な描出が可能であり,その臨床的意義は大きいと思われる.今回の検討では慢性肝炎群における門脈分岐角度の鈍化が証明されたが,臨床的意義の確立には軽微な線維化症例を含めて今後多数例の詳細な検討が必要である.また微小血管の評価には高周波プローブの使用が望ましいことから,今回は経験しなかったものの,体壁による減衰の強い症例では評価が困難であるという問題点も推測される.
【結語】
SMIは慢性肝疾患における線維化の間接的評価法となり得る可能性が示唆された.