Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
消化器 奨励賞

(S454)

Elasticity Imaging(shear wave法)による膵線維化の定量的評価

Quantitative analysis of diagnosing pancreatic fibrosis using Elasticity Imaging(shear wave method)

桑原 崇通1, 廣岡 芳樹2, 伊藤 彰浩1, 川嶋 啓揮1, 大野 栄三郎2, 杉本 啓之1, 鷲見 肇1, 林 大樹朗1, 中村 正直1, 後藤 秀実1, 2

Takamichi KUWAHARA1, Yoshiki HIROOKA2, Akihiro ITOH1, Hiroki KAWASHIMA1, Eizaburo OHNO2, Hiroyuki SUGIMOTO1, Hajime SUMI1, Daijuro HAYASHI1, Masanao NAKAMURA1, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部付属病院光学医療診療部

1Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Endscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【目的】
Elasticity Imagingは,組織の歪みを利用し組織弾性を可視化したstrain法と,剪断弾性波測定を利用し組織弾性率を定量化したshear wave法(SW)の2種類に大別され,非侵襲的な膵線維化診断法として期待されているが,再現性や精度に問題があると言われている.今回我々はSWの再現性と,膵線維化診断の精度を検討することを目的に本研究を計画した.
【方法】
2012年10月から2013年10月までの期間にPhilips社製iU22(elastPQ)を使用したSWにより膵弾性率を測定した正常膵97例と,術前にSWを施行した膵切除17例を対象とした.膵切除例の内訳は膵癌5例,IPMN6例,NET2例,腫瘤形成性膵炎1例,その他3例であった.膵弾性率は,得られた5回以上の測定値の平均により求め,1症例ごとの全測定回数に対する測定成功回数の割合を測定成功率と定義し,60%以下の症例は検討から除外した.膵切除例は,SWにて腫瘍背景膵の膵弾性率を測定し,術後病理標本において測定部位と同部位の膵線維化を評価した.膵線維化評価法はKloppelらの報告[小葉間・小葉内の各部位別に線維化の程度と分布型(限局型・び慢型)を評価し,grade0からgrade12までスコア化した後,5段階(grade0〜2:正常,3〜4:軽度,5〜6:中等度,7〜9:高度,10〜12:び慢性)に分類]を基にした.以下の3項目につき検討した.1)正常膵例における膵弾性率と測定成功率,各々に影響を及ぼす背景因子(年齢,性別,BMI,皮下脂肪,膵と体表の距離,膵と大動脈の距離),2)正常膵例における再現性獲得に必要な測定回数,3)膵切除例における膵弾性率と膵線維化比率との相関.統計学的手法として1),2),3)に関してそれぞれ,Spearmanの順位相関係数,級内相関係数(ICC),Kruskal-Wallis test・Mann-Whitney U-testを使用した.
【結果】
1)全97例中,11例が測定成功率60%以下のため除外し,86例で検討を行った.正常膵の膵弾性率・測定成功率は平均3.76±1.78kPa,平均78.2%で,測定部位別に分類したが有意差は認めなかった(Ph:3.99kPa/84.5%,Pb:3.57kPa/77.2%,Pt:4.42kPa/70.3%).膵弾性率は年齢に対して(rs=0.298:P<0.01),測定成功率は膵と腹部大動脈との距離に対して(rs=0.495:P<0.01)有意な正の相関を示した.2)膵弾性率を被験者に1回測定時のICCはρ=0.384(95%CI:0.29-0.48),5回測定時のICCはρ=0.757(95%CI:0.66-0.84)で,5回測定で95%CIの下限値がρ=0.60を超えた.3)切除膵の膵線維化スコアは,平均grade 6.06±3.51,膵弾性率は平均6.18±4.06kPaであった.膵線維化スコアと膵弾性率は有意な正の相関を認めた(rs =0.814:P<0.01).ROC解析を用いて,SWによる膵弾性率測定の,中等度以上の膵線維化例に対する診断能を検討した結果,SWはAUC 0.93[cut-off value:5.63kPa]と膵線維化に対して高い診断能を有した.
【結論】
膵線維化測定に際し,SWは高い再現性と診断能を有する超音波検査法である.