Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
循環器 奨励賞

(S453)

心不全患者において肝弾性値(liver stiffness)は心イベントを予測する

Liver Stiffness Predicts Cardiac Events in Patients with Heart Failure

谷口 達典1, 大谷 朋仁1, 竹田 泰治1, 大西 俊成1, 西 宏之2, 山口 修1, 中谷 敏1, 澤 芳樹2, 坂田 泰史1

Tatsunori TANIGUCHI1, Tomohito OHTANI1, Yasuharu TAKEDA1, Toshinari ONISHI1, Hiroyuki NISHI2, Osamu YAMAGUCHI1, Satoshi NAKATANI1, Yoshiki SAWA2, Yasushi SAKATA1

1大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学, 2大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学

1Department of Cardiovascular Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, 2Department of Cardiovascular Surgery, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
心不全における高い死亡率と再入院率は近年大きな問題となっている.この一因として心不全退院時に多くの症例でうっ血が残存している可能性が報告されている.肝臓エラストグラフィは肝弾性値(liver stiffness: LS)を推定するための非侵襲的ツールであるが,心不全においてLSの有用性を検討した報告は少ない.最近,我々は器質的肝疾患を有さない心不全症例においてLSにより右房圧を非侵襲的に推定することができることを報告した.
【仮説】
退院時にLSが高値である心不全症例は心イベント(死亡もしくは心不全再入院)を生じる確立が高い.
【目的】
心不全におけるLSの心イベント(死亡もしくは心不全再入院)予測能を検討すること.
【方法】
対象は2012年3月から2013年5月までに大阪大学医学部附属病院に入院した心不全連続症例.問診や検査結果,腹部超音波検査にて肝疾患が示唆された症例は除外した.LSはFibroscan®を用いて退院直前に測定.退院後6ヶ月の心イベント(死亡または心不全再入院)を前向きに追跡調査した.
【結果】
対象患者は107例(年齢66±15歳,LVEF: 43±20%).経過観察中(中央値:81日),25例に心イベントを認めた.LSは中央値で7.1kPa(2.3 - 36.3kPa)であり,LS高値群(≧7.1kPa)は低値群(<7.1kPa)に比し有意に心イベントが多かった(37%(20/54例)vs 9%(5/53例), p=0.0005).また,LS高値群と低値群とではNew York Heart Association functional class, Hb, BUN, AST,γ-GTP, ALP,下大静脈径,TR gradeにおいて有意な差を認めた.Kaplan-Meier法を用いた解析では,LS高値群は有意に心イベントの頻度が高く(Log-rank test: p=0.001), Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では,LSと相関を認めた上記の因子で調整した後にもLSは有意なイベント予測因子であった(HR = 1.11; 95%信頼区間:1.03-1.22,p = 0.01).
【結語】
心不全症例においてLSは退院後の心イベント予測能を有し,高リスク患者の同定に有用であると考えられた.