Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

奨励賞演題
基礎 奨励賞

(S452)

剪断波による組織粘性・弾性分布の画像化の検討

Mapping of elasticity and viscosity properties of tissues based on shear wave speed

五明 美香子1, 近藤 健悟2, 山川 誠3, 椎名 毅1

Mikako GOMYO1, Kengo KONDO2, Makoto YAMAKAWA3, Tsuyoshi SHIINA1

1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2京都大学学際融合教育研究推進センター, 3京都大学先端医工学研究ユニット

1School of Human Health Sciences, Faculty of Medicine, Graduate School of Kyoto University, 2Center for the Promotion of Interdisciplinary Education and Research, Kyoto University, 3Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University

キーワード :

【目的】
癌など多くの疾患では組織性状が変化することが知られており,その変化の指標の一つとして弾性が重要であるとされてきた.組織弾性イメージングは実際に臨床で用いられている一方,粘性も組織の力学的特徴の一つであり,組織の性状を診断する上で重要な指標となり得るとして近年注目されてきた.しかし,粘性の特性や計測法は未解明の点が多く,病変との関連性も明らかにはなっていない.
本研究では,粘弾性特性に関するVoigtモデルを適用し,剪断波速度の周波数特性から,媒質の剪断弾性係数および剪断粘性係数の分布を画像化する手法を提案する.また,組織片での計測を試み,粘弾性特性の臨床応用の今後の可能性を検討する.
【方法・対象】
測定対象に音響放射圧パルスを照射して剪断波を発生させて,各測定点における剪断波速度の周波数特性を求め,それにVoigtモデルを適用して各測定点での剪断弾性・粘性係数値を得た.音響放射圧の照射の際,深さ方向に複数の焦点を設定して短い間隔でパルス波を打つことにより,発生する剪断波を平面波とした.また,Voigtモデルへの近似には,従来の線形近似ではなくニュートン法による曲線近似を用いた.
まず,濃度1%の寒天,10%のゼラチン等で作成したファントムに対して測定した結果を,動的粘弾性装置による機械的な計測値と比較することで,本手法の妥当性の検証を行った.次に組織片を用いてin vitro計測と画像化が可能であるか検討した.
【結果・考察】
直径10mmの内包物を含むファントム実験では,約縦25mm×横20mmの範囲で,剪断粘弾性係数の値を観測することができた.図に示すように内包物の境界は明瞭であり,ファントムの各部位で動的粘弾性装置による値,周囲4.8kPa,内包物12.1kPaに対し,本手法で得られた値は周囲4.2kPa,内包物10.8kPaであり,概ね一致した.平面波を用いることで短時間に広範囲のデータを取得でき,また曲線近似により正確に剪断粘弾性係数を得ることができた.組織片での計測結果では,組織の性状によって,剪断弾性係数に比して剪断粘性係数の値が大きく変化することが示された.提案手法について,照射回数の削減や,不均一性の大きい場合の画質や精度への影響を検討する必要がある.また,今後,動物実験や摘出組織でのin vitroの計測を通して,病変と粘弾性の関係を調べ,組織診断へ応用を検討していきたい.