吉澤 晋¹, 高木 亮², 佐々木 博史¹, 後藤 功太¹, 阿部 信隆³, 小寺 祥平⁴, 村垣 善浩⁵, 伊関 洋⁵, 梅村 晋一郎²

Shin YOSHIZAWA¹, Ryo TAKAGI², Hiroshi SASAKI¹, Kota GOTO¹, Nobutaka ABE³, Shohei KODERA⁴, Yoshihiro MURAGAKI⁵, Hiroshi ISEKI⁵, Shin-ichiro UMEMURA²

¹東北大学大学院工学研究科, ²東北大学大学院医工学研究科, ³株式会社日立メディコ応用機器開発室, ⁴東京動物医療センター獣医師, ⁵東京女子医科大学先端生命医科学研究所

¹Graduate School of Engineering, Tohoku University, ²Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, ³Application Development Office, Hitachi Medical Corporation, ⁴Veterinarian, Tokyo Animal Medical Center, ⁵Institute of Advanced Biomedical Engineering and Science, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

【目的】
強力集束超音波（HIFU）治療は，体外で発生させた超音波をがんなどに集束させて非侵襲に加熱凝固治療する手法として注目されている．一般的なHIFU治療では3秒から20秒程度の超音波照射を数十回〜数百回の繰り返し行う必要がある．加えて正常組織に生じた温度上昇の冷却時間を照射毎に必要とするため，治療が長時間にわたることが問題点の1つとなっている．治療時間を短縮するためには様々な手法があるが，ここではキャビテーション気泡の加熱増強効果に着目した．強力な超音波によって広範囲にキャビテーション気泡を発生させ，これを利用する高効率な超音波加熱手法を開発することが本研究の目的である．
【方法】
広範囲でキャビテーションを援用するために直径120 mm，焦点距離120 mm，128chのアレイトランスデューサを用い，焦点の電子走査を行った．走査点は，HIFU伝播軸垂直平面内の1辺3 mmの正六角形頂点の6点とした．周波数は1 MHzとし，気泡を発生させるための30 - 35 kW/cm²の強力かつ短時間の超音波と1.7-2.7 kW/cm²の連続波を，繰り返し周波数7.4-15 Hzで11 s照射した．生成された気泡はHIFU休止時間に瞬時に溶解すると考えられるため，パルス繰り返しの間に設けた2 msのHIFU休止時間内に，平面波送信を用いた高速超音波イメージングによる気泡モニタリングを行った．HIFU照射対象は脱気された鶏ささみ肉とウサギの大腿部とし，キャビテーション援用効果の有効性を検討した．
【結果と考察】
ささみ肉の実験では，気泡を発生させるための高強度超音波の有無による加熱凝固体積を比較した．高強度超音波照射によって照射エネルギーを20％増加させたことにより，加熱凝固体積は210％増加し，キャビテーション援用効果による超音波加熱の高効率化が示された．動物実験中に撮像した超音波画像および照射後の断面写真を図に示す．断面写真では，広範囲が白変して加熱凝固されているとともに，キャビテーションが原因と思われる赤い出血領域が見られた．高強度超音波照射を行わない場合には，白変領域は目視できず，本照射方法の有効性が示された．また，高速超音波イメージングによって，キャビテーションの発生および成長がリアルタイムに観測できることが確認された．
【結論】
高速超音波イメージングによってリアルタイムにキャビテーション気泡を観察しつつキャビテーション気泡を援用することで高効率な超音波加熱治療を行う手法を開発した．