Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 整形外科
シンポジウム 整形外科1整形外科における超音波診断の現況と未来

(S436)

肩関節・肘関節

Shoulder and elbow joint

渡辺 千聡

Chisato WATANABE

大阪医科大学整形外科

Orthopedic Surgery, Osaka Medical College

キーワード :

近年,超音波診断装置はデジタル化と高周波プローブが導入されたことにより性能の向上は目覚ましく,超音波の分解能が0.2mm以下のハイスペックモデルも出現し,整形外科領域におけるその精度はCTやMRIのそれに優る.また,装置が小型・軽量化されスポーツの現場に容易に持ち出して使用することも可能となっている.運動器疾患をまさしく運動させながら観察することができるため,超音波を用いることで診断の精度は格段に向上する.
肩関節疾患を代表するものとして,腱板損傷,拘縮,石灰性腱炎がある.いずれの疾患も超音波で診断は可能であり,健側と比較することで腱板損傷においては外傷性の断裂か加齢による変性断裂か鑑別がある程度可能である.また,肩関節を自動あるいは他動で動かしながら観察することで拘縮の程度は容易に判断できる.石灰性腱炎においては診断後に超音波ガイド下に薬剤の注入や石灰部の破砕などの治療を引き続き行うことが可能である.成長期のスポーツ肩障害では,過度の投球動作が起因するリトルリーグ肩(上腕骨近位骨端線損傷)が代表する疾患であり,これも超音波で診断が可能である.また治癒過程を超音波で評価することができるため,スポーツの再開時期を超音波で決定することができる.
肘関節疾患を代表するものには野球肘,テニス肘(上腕骨外側上顆炎),肘内障がある.野球肘には内側型と外側型,後方型があり,成長期の障害では内側型は上腕骨内側上顆障害,外側型は上腕骨小頭離断性骨軟骨炎,後方型は疲労骨折がほとんどである.近年,これらの疾患に対して超音波を用いた研究が盛んに行われており,いずれも超音波検査は有用であると報告されており,現在は野球肘検診に超音波装置の携帯が必修となってきている.テニス肘は短橈側手根伸筋腱(ECRB)の付着部症が主病態とされている.超音波ではECRBの変性や断裂,石灰化などの所見と局所血流の増大など,多様な所見が認められる.滑膜ヒダ障害など他の因子がテニス肘の発症に関与することがあるため,超音波でさらに分析し,分類をすることが今後の課題である.肘内障は小児の肘関節障害を代表する疾患であり,日常診療で比較的よく遭遇する疾患である.主病態は橈骨頭の亜脱臼とされているが,今まで(超音波以外の検査で)異常をとらえることができなかった.つまり,担当医が現病歴から判断して治療(整復)を行っていた.超音波ではその異常を即座に判断することができ,また整復後に治ったかどうか(整復されたか)も即座に判断することができるため,肘内障において超音波は画期的な検査法であると言える.肘内障では希に整復が困難で手術を要する症例があるが,現在のところ未整復症例が将来どのような障害を引き起こすのか解明されていないため,手術が本当に必要であるのか演者は疑問を抱いている.今後,多施設での超音波を用いた調査でこれが解明されることを期待している.
超音波検査では関節や筋肉を動かせながら観察することが可能であり,今まで見えなかったものが見えるようになった.しかし,見えたものを正常か異常か判断するにはデータがまだ不足しており,今後さらに調査を行いその解析をすることが整形外科医の課題である.